坂井希久子さんの人気シリーズ「居酒屋ぜんや」の第2巻『居酒屋ぜんや ふんわり穴子天』。
江戸の居酒屋「ぜんや」を舞台に、人々の心の機微を描く時代小説。
江戸の粋な雰囲気の中で繰り広げられる温かな人間ドラマと、
美味しそうな料理の描写が見どころ!

◆あらすじ・内容(どんな本?)

寛政三年弥生。預かった鶯を美声に育てて生計を立てる、小緑旗本の次男坊・林次郎は、
その驚たちの師匠役となる鶯・ルリオの後継のことで頭を悩ませていた。そんなある日、
只次郎は、満開の桜の下で得意客である大店の主人たちと、一方的に憧れている居酒屋
「ぜんや」の別嬪女将・お妙が作った花見弁当を囲み、至福のときを堪能する。しかし、
あちこちからお妙に忍びよる男の影が心配で・・・。
桜色の鯛茶漬け、鴨と葱の椀物、精進料理と、彩り豊かな料理が数々登場する
傑作人情小説第二巻。引用:文庫裏表紙より

◆読みどころ

1. 心に沁みる人情と温かな物語
『居酒屋ぜんや』シリーズの魅力は、何といっても人情味あふれるストーリー。
本作でも、別嬪女将のお妙を中心に、常連客や町の人々が織りなす温かいエピソードが展開されます。

江戸の町では、武士や商人、職人など、さまざまな立場の人々が日々を生きています。
彼らが「ぜんや」に集い、それぞれの悩みや喜びを語る様子は、まるで現代の居酒屋のよう。
江戸の時代背景を活かしつつも、現代の読者にも共感できる人間ドラマが繰り広げられます。

江戸の庶民の生活がリアルに描かれ、
読めば読むほど「ぜんや」に通いたくなるような温かみがあります。

2. 料理の描写が絶品!
タイトルにもなっている「ふんわり穴子天」をはじめ、
本作には江戸の味を感じさせる料理が数多く登場します。
坂井希久子さんの筆致は、ただの料理描写ではなく、その一皿に込められた想いや、
それを味わう人々の表情までも活き活きと描いています。

たとえば、穴子天のふわっとした食感や香ばしい香り、衣のサクサク感が伝わる描写には、
思わずお腹が鳴ってしまうほど。
食べ物が物語の中で重要な役割を果たし、それが登場人物たちの心情やストーリーの展開に
繋がっていく点も、本作の魅力のひとつです。

読んでいるうちに、
江戸の居酒屋でしみじみと旨い酒を飲みたくなる——そんな感覚を味わえる一冊!

また、登場人物の言葉遣いや町人の風習なども丁寧に描かれており、
歴史好きの読者にとっても楽しめる要素がたくさん詰まっています。

◆こんな人におすすめ!

人情味あふれる物語が好きな方
人と人との温かな交流に癒されたい方にはぴったりの一冊です。
現代の仕事や人間関係に疲れたときに読むと、
心がほっとすることでしょう。

美味しい料理の描写が楽しめる小説を求めている方
グルメ小説としても楽しめる本作。江戸の味を想像しながら読むと、
より一層物語に没入できます。

江戸の町並みや暮らしに興味がある方
風情ある江戸の町を描いた作品が好きな方にもおすすめ。
歴史小説初心者でも読みやすく、親しみやすい筆致が魅力です。

◆著者プロフィール

1977年和歌山県生まれ。同志社女子大学学芸学部日本語日本文学科卒業。会社員を経て、
プ口作家を志し上京。小説講座での研鑽を経て、2008年、「虫のいどころ」で第88回
オール讀物新人賞を受賞。2015年、『ヒーローインタビュー』が『本の雑誌増刊
おすすめ文庫王国2016』のエンターテインメント部門第1位に選ばれる。著書に
『ハーレーじじいの背中』『ウィメンズマラソン』『虹猫喫茶店』『ただいまが、
聞こえない』『泣いたらアカンで通天閣』『羊くんと踊れば』『恋するあずさ号』
『こじれたふたり』などがある。 引用:文庫カバーより

◆まとめ

坂井希久子さんの『居酒屋ぜんや ふんわり穴子天』は、心温まる人情話、美味しい料理、
そして江戸の情緒をたっぷり楽しめる作品です。シリーズを通して登場人物たちの関係性が
深まっていくため、過去作を読んでいる方はもちろん、本作から読み始めても十分楽しめます。

日々の喧騒を忘れ、江戸の居酒屋でゆったりとしたひとときを過ごすような気分に浸れる本作。
ぜひ、休日のリラックスタイムなどに読んでみてはいかがでしょうか?