20世紀初頭の中国を舞台に、農民から成り上がる王龍とその一族の運命を描いた壮大な歴史小説
第3巻は激動する中国社会が舞台。その中で王龍の子孫たちが直面する苦悩や変化とは。。。
●あらすじ・内容(どんな本?)
美しい妻に裏切られた王虎将軍は傷つき、自暴自棄になって兄たちがそれぞれ世話
をした嫁を二人とも娶ってしまう。二人の妻は、男児と女児をひとりずつ生むが、
息子の王淵は、軍人である父を憎み、祖父・王龍の血を引いて土地を愛し、
農民の生活に憧れる青年に育つ。革命運動が中国全土を覆うなか、いとこの猛と
共に革命党に加わった淵は、官憲に捕らわれて死刑を待つばかりの身となるが。
引用:文庫裏表紙より
●時代背景
本作の舞台は、清朝崩壊後の中国、すなわち20世紀初頭から中盤にかけての混乱期です。
この時代、中国は列強の影響を受けながら急速に近代化が進む一方、伝統的な価値観が
揺らぎつつありました。
王龍の孫の世代は、かつての農民の価値観を捨て、西洋的な思想や教育を受けることに
憧れるようになります。彼らの葛藤は、そのまま当時の中国社会の転換期を象徴しています。
●おすすめポイント
①伝統と近代化の狭間で揺れる世代交代
王龍が築いた富を受け継いだ子孫たちは、祖父の価値観を否定し、より都市的な生活を求めます。
しかし、伝統を捨てきれない者もおり、家族内での価値観の対立が浮き彫りになります。これは、
当時の中国全体の状況とも重なり、読者に強い印象を与えます。
②女性の立場と変化
本作では、女性の生き方も時代とともに変化していく様子が描かれます。かつての農村社会では
女性は従属的な立場にありましたが、都市部では教育を受ける女性も増え、新しい生き方を模索
する姿が登場します。これは現代にも通じるテーマであり、興味深い視点を提供してくれます。
③歴史的なリアリティと壮大なストーリー
パール・バックは、中国で生まれ育ち、中国社会を深く理解した作家です。そのため、当時の
社会や人々の暮らしが細やかに描かれており、まるで歴史の証言を読んでいるかのようなリアリ
ティがあります。物語としての面白さはもちろん、歴史好きにはたまらない作品といえるでしょう。
●『大地』第3巻からの学び
①変化する社会で生き抜くための適応力
伝統的な価値観にしがみつくか、新しい価値観を受け入れるか。登場人物たちの選択は、現代を
生きる私たちにも通じる問題です。変化の激しい時代において、どのように適応しながら生き抜く
かを考えさせられます。
②家族の絆と世代間の対立
世代間の価値観の違いによる対立は、どの時代にも存在します。本作では、祖父、父、孫の三世代
の葛藤を通じて、家族のあり方を考えさせられます。
③歴史を学び、現代を理解する視点
20世紀初頭の中国は、現代の世界にも影響を与えた重要な時代です。この時代の変化を知ることで、
今の中国の成り立ちや価値観をより深く理解する手がかりになります。
●こんな人におすすめ
・歴史小説が好きな人
実際の歴史を背景にした壮大な物語が展開されるため、歴史小説好きにはぴったりです。
特に中国の近代史に興味がある方には、多くの発見があるでしょう。
・家族の物語が好きな人
家族の絆、世代間の対立、親子の関係性がリアルに描かれており、単なる歴史小説ではなく、
人間ドラマとしても楽しめます。
●著者プロフィール:パール・バック Pearl Sydenstricker Buck(1892—1973)
米国ウェスト・バージニア州に生れる。宜教師の両親と共に幼くして中国に渡り、
そこで育つ。高等教育を受けるため一時帰国したのちび中国にとどまり、中国
民衆の生活を題材にした小説を書き始める。代表作『大地」(1931)で
ピューリッツァー賞を受賞、”38年に米国の女性作家としては初めてノーベル
文学賞を受賞した。 引用:文庫カバーより