一話完結型で読みやすく、笑えるシーンもたっぷり。時代小説初心者にもおすすめ。
●あらすじ・内容
今日も騒ぎが絶えない本所おけら長屋。だるま長屋との度胸勝負で本物の幽霊が・・・・・・。お染が考えた半標が売り出されて大当たり?吉原に通い詰める藩士の子細を知った藩主・高宗の決断とは。久蔵が見た富くじの夢は現実となるのか。金貸しのお熊ばあさんが過去と訣別するために選んだ手段は・・・・・。笑いと涙が同居する、大反響の連作時代小説シリーズ第五弾。
●おすすめどころ・感想
・万造、松吉、八五郎たちのばかばかしいふるまいは、こんなバカバカしいことをしながらでも生きていけるとは世の中すてたものではないと幽霊に思わせしまうほど。
・「商い、芸事、どんな修行でも、3年間死に物狂いで頑張れば、必ず身につくという。3年間は、女房も持たず、遊びもひかえて、商い一筋で気張ってほしい。」今でも通日こと。何かをやり遂げようとするならそれ位の覚悟をもってやらなければならない。また、3年間必死でやれば、やり遂げた後には必ず何者かになっているはずだ。覚悟をもってやることの重要さを感じた。長い人生、こんな時が何度かある。
・「あたしや、おけら長屋に関わりのあることだったら言わなくてもいい。そうじゃないんだったら話してごらんよ。悩みなんてもんは、人に話すだけで、ずいぶんと楽になるもんさ」悩みはなかなか人には話しにくい。話しにくいからこそ、話しやすいように聞いてあげなければならない。だから、無理して、言わなくてもいいんだよ、でもそうでなかったら話してごらんと聞いてあげると話やすくなるのだ。さすが、お染さん。
●この本をおすすめする人
笑いたい人・・「ねのこく」へんな意地の張り合いからばかばかしいきもだめしがはじまる。
泣きたい人・・「はるこい」石黒藩の藩主高宗が若い藩士と吉原に考えさられた。
ほのぼのしたい人・・「まさゆめ」久蔵がみた夢は正夢なのか?
●著者プロフィール
畠山健二(はたけやま けんじ):1957年東京都目黒区生まれ。墨田区本所育ち。演芸の台本執筆や演出、週刊誌のコラム連載、ものかき塾での講師まで精力的に活動する。日本文芸家クラブ会員。著書に「下町のオキテ」(講談社文庫)、「お笑いグルメ帳』(双薬社)、「落語歳時記』(文化出版局)など多数。2012年「スプラッシュマンション」(PHP研究所)で小説家デビュー。文庫書き下ろし時代小説「本所おけら長屋」(PHP文芸文庫)が好評を博し、人気シリーズとなる。引用:文庫著者紹介より
●まとめ
第5弾のおすすめは、わけありではお熊ばあさんとおけら長屋の万造と松吉が手を組む。
今回はやさしくもあり、厳しくもある金貸しのお熊ばあさんの過去があきらかになる。