シリーズ第六段。いよいよ文七とお糸の祝言が近づく!
そんな時でもおけら長屋には笑いと涙と騒動はつきない!
●あらすじ・内容
本所亀沢町にあるおけら長屋は、今日も騒がしい。密かにお染のあとをつける大工の又造。その意外な理由とは。花見で浮かれる長屋の連中をよそに、一人沈む万造。ひょんなことから五十年前の真実が明らかに。穴百屋の金太に嫁取りの話が!?: お糸と文七の祝言が近づく長屋のあちこちで難事が発生。折しも流行病が西方から江戸へ、そして本所にも・・・・・・。笑って泣ける大人気連作時代小説、シリーズ第六弾。文庫書き下ろし。引用:文庫裏表紙より
●この本のおすすめどころ
おけら長屋の評判は?・・おけら長屋の近所での評判は「お節介だけど情け深い人ばかりで、三日住んだらやめられない」ということらしいが、今住んでるお里に言わせると「冗談じゃない。住んだことがないからそんな呑気なことが言えるのさ。まともな人だったら三日ももたないよ」らしい。お里は住んでるのに。。
今あることがありがたい・・万造は捨て子だった。拾われたのは桜の季節だったらしい。だから万造にとっては春・桜の季節はちょっと気分が落ち込む寂しい季節だった。久しぶりにおけら長屋でも花見をすることになり、半分むりやり連れてこられた万造。でも、おけら長屋の連中がみんな笑って、手をたたいて大騒ぎ。そんな光景をみてしみじみと楽しい花見じゃないかと思う。万造はおけら長屋にきてよかった、こんな楽しい花見ができてよかったと。だったら俺を捨てた親に、礼を言わなきゃならないなと思った。
万造や松吉や魚辰のやさしさ・・野菜売りの金太は少し知恵足らずだが、おけら長屋では普通に暮らしている。長屋のみんなが何かと面倒をみてあげているのだ。それは普段の生活だけではなく、万造、松吉が騒動を起こした時も同じだ。ちゃんと騒動がおこる時は金太も巻き込んであげる。騒動の中に引き入れている。金太みたいな人は騒動があっても蚊帳の外ということが多い、それはきっと寂しいもの。でも、おけら長屋は違う。金太もおけら長屋の仲間として認めているからこそ騒動の中にちゃんといる。
人のため・・万造ははやり病にかかり高熱をだし苦しんでいるお満を治す薬を手に入れるために筑波まで行くと言い出す。筑波まで行くとなると米屋の奉公はできなくなる。今度なにかやらかしたらクビになると聞いている長屋の住人は大丈夫かと心配するが、万造は「人の命がかかってるんでえ。四の五の抜かしたら、こっちからやめてやらあ」と言って、飛び出して行ってしまった。
バカはするけど、人のためにやって、人のせいにしない・・お糸の結婚式を立派にしてあげるために、人から嘘で集めたお金を博打で全部すってしまう八五郎と万松。バカなことやっているが、自分たちのためにやっているんじゃないし、人のせいにしない。万松の二人は八五郎をかばって自分たち二人で博打をしたと言い、八五郎は自分が万松を博打に誘ったと言っている。この心がおけら長屋を象徴している。
娘を嫁がせる本心・・お糸結婚の日の八五郎。娘を嫁に出すお父さんってきっとみんなこんな気持ちなんだと思う。。
「おめえは、この八五郎とお里の娘だ。だが、今日からは、そのめえに、文七の女房だってことを忘れるんじゃねえぞ。どんなにつれえことがあっても、この家の敷居は跨がせねえ。そのつもりで嫁にいきやがれ。」
「だがよ、どうしもて我慢できなかったら、どうしても我慢できねえことがあったら、いつでもけえってきな。わかったな。」
●この本をおすすめする人
人情噺の好きな人・・どこから読んでも文句なしに人情だらけ
人間関係に悩む人・・人間関係って理屈じゃないんだよ、気持ちなんだよっておけら長屋をみてるとそう思える
●著者プロフィール
畠山健二(はたけやま けんじ)1957年東京都目黒区生まれ。墨田区本所育ち。演芸の台本執筆や演出、週刊誌のコラム連載、ものかき塾での講師まで精力的に活動する。日本文芸家クラブ会員。著書に「下町のオキテ」(講談社文庫)、「お笑いグルメ帳』(双薬社)、「落語歳時記』(文化出版局)など多数。2012年「スプラッシュマンション」(PHP研究所)で小説家デビュー。文庫書き下ろし時代小説「本所おけら長屋」(PHP文芸文庫)が好評を博し、人気シリーズとなる。引用:文庫著者紹介より
●まとめ
笑わせてくれるし、泣かせてくれるし、時にはためになる話もきける。
おけら長屋は相変わらずすごい