仇討、お栄の結婚?、大きくて弱い相撲取り、立てこもり事件、親子の絆と
第八巻もバラエティにとんでもりだくさん。
犬猿の仲の万造とお満のほのぼのとした変化も見どころ!

●あらすじ・内容

江戸は本所亀沢町にある「おけら長屋」では、今日も騒動が巻き起こる。長屋の浪人・鉄斎に剣術の手ほどきを求めてきた娘の目的とは。天下の大関と対戦することになった気弱な相撲取りを勝たせるべく、万造と松吉は策を巡らすが・・・・・・家を出た一人類と、頑固な父親を再会させるために走する万造とお満だったが、二人の心にも微妙な変化がーなど、五備を収録した、笑って泣ける大好評シリーズ第八弾。文庫書き下ろし。引用:文庫裏表紙

●読みどころ・・・名セリフとともに読みどころを紹介

すけっと
「し、島田先生。この方々は・・・・」
あなたの味方であることには間違いない
仇討のために剣術を教えてほしいと島田鉄斎を訪ねてきた美乃。若い娘が鉄斎を訪ねてきたということで、何事かと気になり盗み聞きする万造、松吉、お里。話が仇討と聞こえて、父親のためとはいえ13歳の美乃が仇討なんて無謀すぎると、いきなり鉄斎の部屋に入ってきて、言いたいこと言いまくる3人をみて呆気に取られて言った美乃のセリフ。仇討は誰も幸せにならない、討つ方も、討たれる方も家族がいる。そもそもどっちが勝つかもわからない。武士としては仇討は正当なもので、やらない方がむしろ武士の恥と責められることになる。13才の少女の仇討をおけら長屋がかかわってどううまく持っていくのか?最後は奉行所も巻き込んでなんとも気持ちいい、こんな落としどころがあったのかという結末が絶妙。

うらしま
おけら長屋の連中行きつけの居酒屋「三祐」のお栄が主役。お栄は二十歳になる娘だが言いたいことをズバズバ言う娘で万造、松吉とも互角以上に闘う事ができる。そんなお栄の人柄を描いた場面。店の前に座っていた物乞いに声をかけるお栄。『また来たのね。この前、あんたが大川端で走っているのを見たよ。犬に追いかけられてたみたい。あんなに早く走れるんじゃないの。それなのにいつも足を引きずったりなんかして。それて、恥ずかしいことだと思うよ。ちゃんと働きなよ。恵んでもらったものを食べてもおいしくないでしょ。汗水流して稼いだ金で食べるご飯は美味しいよ。あたしはね、あんたに本当に美味しいものを食べてもらいたいんだ。だから、今日はなにもあげないからね。ほら、帰った、帰った』

ふところ
力士の大巌関は体は大きいが、気が弱くなかなか勝てない。力を出し切れない大巌関を応援する万松。この二人が借金をして全部大巌関にかけてしまった。自信のない大巌関は万松の二人に「お前に全部かけてしまったのだから絶対勝て」と言われて困ってしまう。万造と松吉は本当は優しい人なんだと、こんな風に鉄斎が語った。

「あの二人は大巌関と同じ崖っぷちに立つつもりなのだ。あんたの周りにも、贔屓にしてくれる人はたくさんいるだろう。励ましてくれたり、祝儀をくれる人はありがたい。だがな、同じところに立ってくれる人は、そういるものではない。あの二人はあんたが負けたら、一緒に堕ちるつもりなんだ。」

おけら長屋は一見めちゃくちゃのように見えてることも本当はちゃんと優しさがある。

●こんな人におすすめ

癒されたい人・・・笑って、泣いて、そのうち涙が乾いたら自然と癒されています。どんな時でも癒されています。

●著者プロフィール

畠山健二(はたけやま けんじ)
1957年東京都目黒区生まれ。墨田区本所育ち。演芸の台本執筆や演出、週刊誌のコラム連載、ものかき塾での講師まで精力的に活動する。日本文芸家クラブ会員。著書に「下町のオキテ」(講談社文庫)、「お笑いグルメ帳』(双薬社)、「落語歳時記』(文化出版局)など多数。2012年「スプラッシュマンション」(PHP研究所)で小説家デビュー。文庫書き下ろし時代小説「本所おけら長屋」(PHP文芸文庫)が好評を博し、人気シリーズとなる。引用:文庫著者紹介より