せつなく泣ける 出会いと別れ の第7巻

●あらすじ・内容

人情とお節介で名高い、江戸は本所沢町のおけら長屋に今日も騒動が舞い込んでー。市中を騒がせる義賊”ねずみ小僧”を長屋の住人万造、松吉が追う!?名医聖庵の切ない過去が明らかに。旅芝居の座長、白鷺太夫は生き別れた妹と・・・。小間物屋の主が吉原に足繁く通う理由とは。藤沢の娘を訪ねた大家の徳兵衛は、とんだ難事に巻き込まれ・・・。大評判のシリーズ第七弾は、著者入魂の五備を収録。文庫書き下ろし。引用:文庫裏表紙より

●読みどころ

ねずみや
悪人から金を盗み、真面目に働いても貧乏な庶民に盗んだお金をばら撒くねずみ小僧。盗人は盗人だが、義賊といわれ庶民からの人気は絶大。そんなねずみ小僧は本所おけら長屋にも登場する。曲がったことが嫌いで悪い奴を許してはおけない江戸っ子、お金をばら撒いてくれる事よりも悪徳商人などを懲らしめてやってることが一番の人気の理由だろう。ただ、盗人は盗人、火付盗賊改方としては見過ごしているわけにはいかない。庶民を敵に回さず、鼠小僧をお縄にするのか?御上の粋なさばきがお見事!

ひだまり
聖庵堂の聖庵は評判のいい医者。ぶっきらぼうで口が悪い人柄だが、医者としての腕はよく、人情家なので江戸っ子には人気がある。もってる人からはお金はとるが、貧乏人からはお金をとらない。あるとき払いの催促なしという聖庵のやり方も庶民の見方だ。どうして人の心としっかり向き合う人情家の医者が出来上がったのか?医学を学ぶ若い聖庵を支えようとした女の存在に涙せずにはいられない。

しらさぎ
本話では旅芸人がゲスト主役。幼い頃に火事にあい生き別れた姉妹のせつなく、でも最後はぱぁっと晴れやかな気持ちになる話。もちろん笑いもしっかりとある。そんな話のなかから心にささった芝居のセリフ。「あんたは、世の中のことを何もわかっちゃいない。そりゃ、許せない奴もいるさ。正直者がバカをみることだってある、でも、それに負けちゃいけないんだよ。どうして、この世に中に、こんなにたくさんの人がいるかしってうかい。それはね、人と人が助け合って生きていくためなんだよ。人には一人ではどうにもならないことがたくさん起こるからね。」人は助け合いながらじゃないと生きていけないものだ。

おしろい
「旦那。まあ、いっぺえやってください。何も恥ずかしがることはねえんで。だれだって、他人には言えねえ秘密の一つや二つはあるもんでさあ。それが人ってもんじゃねえんですかい。あっしの癖はね、、、」
万松の二人は世の中をまっすぐにみて、ふところが深い。このあたりはさすが。

あまから
「おまえさんたちは、過ちを責める人になりたいか。それとも許す人になりたいか。どっちだ。私は過ちを許す人でありたい。」鉄斎のいいセリフ。
私も人の過ちを許せる人になりたい。でもなかなか人のことって許せない。だからこそ、許せる人になろうと意識しつづけていきたい。

●こんな人におすすめ

癒されたい人・・・笑って、泣いて、そのうち涙が乾いたら自然と癒されています。どんな時でも癒されています。

●著者プロフィール

畠山健二(はたけやま けんじ) 1957年、東京都目黒区生まれ。墨田区本所育ち。演芸の台本執筆や演出、週刊誌のコラム連載、ものかき塾での講師まで精力的に活動する。著書に「下町のオキテ』(講談社文庫)、「下町呑んだくれグルメ道』(河出文庫)、「超入門!江戸を楽しむ古典落語』(PHP文庫)など多数。2012年、「スプラッシュ マンション」(PHP研究所)で小説家デビュー。文庫書き下ろし時代小説「本所おけら長屋』(PHP文芸文庫)が好評を博し、人気シリーズとなる。引用:文庫巻末著者紹介より

●まとめ

ねずみ小僧の兄妹ではじまり、ねずみやという芋売り兄妹で締められてる第7巻。一つ一つの短編も文句のつけようがない面白さだが、5篇の構成がなんとも粋な連作構成になっている。