実は!戦国時代屈指の名将だった、今川義元
●あらすじ・内容
強い今川家を目指し、検地や寄親・寄子制を導入するなど制度改革を行い、古臭い家風を変えようと当主として肝胆を砕く義元。東に北条、北に武田、西に織田という手強い相手に囲まれつつも、冷静沈着で独自の情報収集網を持つ地獄耳の師僧・太原雪斎の意見に耳を傾けながら、義元はいつしか「海道一の弓取り」と称されるまでになる。しかし、雪斎亡きあと正確な情報を得られず判断が鈍り始めると、いつしか織田への疑念が生まれていた。甲相験三国同盟を成立させ、今川家を繁栄させた名将は、篠突く雨の桶狭間で運命の時を迎える。 引用:文庫裏表紙より
●読みどころ
今川義元のイメージが変わる?
今川義元といえば、桶狭間の戦いで織田信長に敗れた「過信の武将」というイメージが強いかもしれません。一般的な歴史観では、義元は奢侈を好む凡将と描かれることが少なくありません。しかし、この作品では彼の人間性や努力、そして何よりもその生きざまが丁寧に描かれています。義元のという人物を単なる敗者としてではなく、乱世の世にあった奮闘する一人のリーダーとして本書では描かれています。若き義元の修行時代から、いかにして今川家の当主になったのか?どのように今川家を強大な勢力をもつ集団に築き上げたのか?その過程を丁寧にひも解くことで、義元のあまり知られていなかった一面に触れることができます。
義元の文化人としての一面。
義元は京都の公家文化を愛していたとされています。その教養は彼の政治手腕にも影響を与え、彼が「海道一の弓取り」称される元にもなっています。そんな義元の多面的な魅力が緻密に描かれています。
義元「人間」としての魅力。
もちろん、本書のクライマックスは桶狭間の戦いです。歴史の結末は変わりませんが、義元がその最後の瞬間まで当主としての役割を果たそうとした姿勢には胸打たれます。単なる敗者ではなかったんだ、とあらためて「人間・今川義元」を見直してしまいます。また、戦国時代という時代そのものの苛烈さも背景としてしっかり描かれており、どれだけの知略や努力を持ってしても時代の波に飲み込まれる武将たち。その中で、彼が成し遂げたことや信念を貫いた姿勢は現代の私たちにも大いに刺激を与えてくれるでしょう。
●こんな人におすすめ
歴史好きな人:歴史好きはもちろん、これまで義元に興味がなかった方、彼に対するイメージが大きく変わること間違いなし。
歴史小説初心者:戦国時代に詳しくない人も、ストーリーに自然と引き込まれながら歴史を学べるので、入門書としてもおすすめです。
●著者プロフィール
1978年埼玉県生まれの一男一女の父。メーカー勤務のかたわら、2015年頃から本格的に小説を書き始める。2019年、Nirone名義で執筆した小説「わたしのイクメンブログ」が漫画化(全3巻・完結)。2020年「松の廊下でつかまえて」で第3回歴史文芸賞最優秀賞を受賞(「あの日、松の廊下で」に改題し文庫化)。Twitter ID : @Via_Nirone7 引用:文庫カバーより
●まとめ
結局、義元は桶狭間で死ぬ。それでも、やっぱり今川義元はすごい大名だったという事が認識させられました。今川義元という人物の新たな魅力を教えてくれるだけでなく、戦国時代の戦々恐々とした時代の風もしっかり感じられる作品です。新たな今川義元像にふれて、彼に対する見方が変わり、彼の生きざまに感動を覚えるでしょう。