浅野内匠頭の奮闘努力っぷりに泣ける歴史小説だ!

●あらすじ・内容

「殿中でござるってばァ・・・・・・」そう発することになってしまった旗本・梶川与惣兵衛は、「あの日」もいつもどおり仕事をしていた。赤穂浪士が討ち入りを果たした、世にいう「忠臣蔵」の発端となった松の廊下刃傷事件が起きた日である。江戸中を揺るがす大事件の目撃者、そして浅野内匠頭と吉良上野介の間に割って入った人物として一躍注目されるようになった彼は、どんな想いを抱えていたのか。江戸城という大組織に勤める一人の侍の悲哀を、軽妙な筆致で描いた、第3回歴史文芸賞最優秀賞受賞作。引用:文庫裏表紙より

梶川惣兵衛が語る浅野内匠頭も吉良上野介も素晴らしい人物だった。それがなぜあの松の廊下の事件になってしまったのか?後戻りができない一部始終を惣兵衛だけがみていた。

●おすすめどころ・感想

非常に有能で、人間としても素晴らしい人物であった吉良上野介と浅野内匠頭なぜこのような二人があの松の廊下の事件を引き起こすに至ったか?一度ほつれ始めた糸はなかなかもとには戻らないものだ。あー、二人とも思い違いしてるよーと教えたくなる。はがゆい思いがとまらなかった。

穂藩士のことを与惣兵衛が羨ましがるほど浅野内匠頭は家臣思い、領国思いの素晴らしい殿様だった。藩士からこれほど慕われる殿様があっただろうか。そんな浅野内匠頭の人情味のある人柄はとても素敵でした。

たった一人でいい。自分のやっていることをみて、それは素晴らしいことだ、間違ってないと思うと言ってくれる人がいればいい。これさえあれば誰でも、よし!もっと頑張ってみようと思えるのものだ。特に相談する人が少ない立場の人にこそ言えることかもしれない。吉良上野介がそうだったのだから。今も昔も人の上に立つ人は孤独というが、きっとそれは事実なのだろう。

梶川与惣兵衛は「人の世の阿弥陀になるのだ」秘かに、そして大真面目に考えて生きていた。そのような心掛けで生きてみたいと思った。

●この本をおすすめする人

ある意味これはビジネス小説でした。
・職場の人間関係に悩む人・・どこにでも気の合う人、合わない人はいるもの。合わない人との付き合い方はどうすべきなのか、ヒントがかくされています。
・孤独を感じる人・・立場が上になればなるほど相談できる人も少なくなり孤独感が強くなる。組織のトップはその最たるもの。上に立つ人間が何か判断を下すときはどのような考え方をしているのか?そんなヒントもありの小説。
・無理難題を押しつけられて困っている人・・いやー困った!あっちを立てればこっちがたたず、こっちをたてればあっちがたたず。人は板挟みになったときにどう行動するのか?の参考に。

●著者プロフィール

1978年埼玉県生まれの一男一女の父。メーカー勤務のかたわら、2015年頃から本格的に小説を書き始める。2019年、Nirone名義で執筆した小説「わたしのイクメンブログ」が漫画化(全3巻・完結)。2020年「松の廊下でつかまえて」で第3回歴史文芸賞最優秀賞を受賞(「あの日、松の廊下で」に改題し文庫化)。引用:文庫カバーより

●まとめ

年に一度の重要行事、勅使の饗応役に任ぜられた浅野内匠頭、その指導係の吉良上野介、行事にかかわる雑務をこなす与惣兵衛。この三人は松の廊下でもみくちゃになるのではなく、本当は饗応役が終わった後に笑顔で楽しく打ち上げの一献を酌み交わしていたはずだった。。。 忠臣蔵の悲しい序章。