うぽっぽ(のんき者とかうっかり者)というあだ名のこの廻り同心、実はすごい男だった!
●あらすじ・内容(どんな本?)
眉間の黒子に、福々しい頼。暢気に歩きまわる姿から“うぽっぽ”とよばれる、臨時廻り同心の長尾勘兵衛。目こぼし料を受けとらず、野心の欠片もないが、人知れぬところで江戸の無理難題を小粋に裁く。「人が悪に染まるにゃ、それなりの理由がある。おれはよ、その理由ってのが知りてえんだ」。情けが身に沁みる、傑作捕物帳シリーズ第一弾! 引用:文庫裏表紙より
●読みどころ
・長尾勘兵衛、52才。この男の酔った時の口癖は「人が悪に染まるにゃ、それなりの理由がある。
おれはよ、その理由ってのが知りてえのさ」。 そういう勘兵衛は、たとえ罪を犯した相手でも、
情けにほだされれば裏から救いの手を差しのべてやる、そんな男なのだ。そんな勘兵衛が江戸の町を
「うぽっぽ」と人からいわれながらも歩き回る。決して悪は見逃しはしない。
・江戸の町の日常がみえる。江戸の人も腹は減る。魚屋から生きのいい鰯を買って焼く。
焼けた鰯から脂がしたたり落ちて、食べごろになる。実にうまそうで食べたくなる。
勘兵衛の好きな食べ物は豆腐と鰻。楽しみは酒と寄席と朝風呂。
まるで今の50代のサラリーマンと同じ趣味趣向じゃないかと思う。
このようなところから、この話遠い昔の話ではなくてとても身近な話として入ってきます。
・うぽっぽとよばれる勘兵衛は、なにものにも縛られず、つねに流れるよう雲のようであり続けたい
という強い願望をもっている。だから袖の下は受け取らない。
金をもらえば、見返りを期待される。そんな鬱陶しいことはしたくない。
これがこの男の仕事の流儀なのだ。
・勘兵衛が三日にあげずに足を向ける居酒屋のおふうは三十路なかばの渋皮のむけた良い女だ。
このおふうと勘兵衛のからみもこの小説の楽しみのひとつ。
勘兵衛は店の常連の一人なのか、それともおふうにとって特別な存在なのか?
それは勘兵衛にもわからないのかも。
●こんな人におすすめ
50代の人:うぽっぽの旦那長尾官兵衛は52才。江戸時代の50才の同心には共感がたくさんある。
●著者プロフィール
1961年、新潟県生まれ。11年の会社勤めを経て文筆の世界へ入る。江戸の情緒と人情の機微、そして花鳥風月を醸し出す筆致で、多くの読者を魅了している。「鬼役」「鬼役伝」「はぐれ又兵衛例練控」シリーズで第十一回日本歴史時代作家協会賞「シリーズ賞」を受賞。その他のシリーズに「帳尻屋始末」「帳尻屋仕置」「照れ降れ長屋風聞帖」「死ぬがよく候」「人情江戸飛脚」などがある。引用:文庫カバーより