癒やしと美味しい料理、もどかしい恋の行方…こんにちは、読書を楽しむ50代のかあきです。
今回は、坂井希久子さんの人気シリーズ「居酒屋ぜんや」の第7巻、『ふうふうつみれ鍋』
の魅力をお伝えしたいと思います。

「居酒屋ぜんや」シリーズは、私にとってすっかり「癒し本のひとつ」になっています。
「安心感」があって、ホッと一息つけるんです。
さて、この『ふうふうつみれ鍋』はどんなお話なのでしょうか。

◆あらすじ

舞台は江戸。亡き旦那の後を継ぎ、居酒屋「ぜんや」を切り盛りする美人女将・お妙(おたえ)。
そして、「ぜんや」の二階に居候している、武家の次男坊・林只次郎(はやしただじろう)
。彼は鶯(うぐいす)の飼育が得意で、当代一の美声を持つ鶯ルリオの雛が無事に成長し、
美しい声で歌い始めたことに喜びを感じていました。

第7巻では、成長した鶯の若鳥一羽を、只次郎を贔屓にする馴染みの旦那衆の誰に譲るのか。
これを、居酒屋「ぜんや」で美味しい食事を囲みつつ決めることになります。豆腐と筍のうま煮、
、筍ご飯といった筍づくしの絶品料理が並ぶ中で、旦那衆はそれぞれの鶯への愛情を主張します。

これは、庶民の味方の居酒屋「ぜんや」を舞台に、温かい人情と美味しい料理、そして個性豊かな
人々の日常が描かれる、心にも体にもしあわせ沁み渡る傑作人情小説です。

◆『ふうふうつみれ鍋』の読みどころ3つ

この『ふうふうつみれ鍋』を読んで、
「やっぱりこのシリーズ好きだなぁ」と感じた読みどころを3つご紹介します。

1. 読むだけでお腹が空いてくる! 温かい絶品料理の描写
居酒屋ぜんやシリーズ最大の魅力と言えば、何と言ってもお妙さんが作る美味しそうな料理です。
第7巻のタイトルにもなっている「ふうふうつみれ鍋」はもちろん、春告げ鳥の章で登場する
「豆腐と筍のうま煮、筍羹、筍ご飯」といった筍料理の数々 もたまりません。季節に合わせた
旬の食材を使った料理は、まるで実際に目の前に出されているかのような気持ちになるくらい!
美味しい料理を読んでいると、「活力が湧き、幸せを感じる」んです。
これが、このシリーズを読むと「癒される」大きな理由の一つだと思います。

2. 人間味あふれる登場人物たちの織りなす、温かい人間模様
「ぜんや」に集まる常連客や、只次郎の周りの人々が皆、とても魅力的です。
お馴染みの升川屋夫婦や、裏長屋のおえん、只次郎の姪のお栄など、それぞれの人生が描かれます。
只次郎自身も、武士であることの窮屈さと商人になりたい夢、そしてお妙への想いの間で揺れ動く
「心の動きがなんともリアル」で、「大人になったなあ~」と感じさせられます。
彼らのやり取りや悩み、そして互いを思いやる気持ちに触れると、心が温かくなります。
「読めば読むほど登場人物に愛着がわいて」くるから、いつまでも彼らの物語を読みたくなります。

3. ヤキモキさせられる!? 只次郎とお妙の「もどかしい」恋の行方
シリーズを追いかけていると、これが一番気になるところではないでしょうか!
只次郎とお妙さんの関係性は、お互いに想いがあるようなのに、どうにも進展しない・・・
「好きあっていながらなかなか口に出せない」、「態度には十分出し合っているもの」 とはいえ、
本当に「じれったい!じれったい!。

この巻では、只次郎に大店の娘・お浜から縁談が持ち込まれ、「二人の関係が遂に決着かと
思いきや…」という展開に目がはなせません。
お妙さんの亡き夫への想いや、只次郎の気持ちに気づかないお妙さんの
「もどかしさ」、ヤキモキしつつも、続きを期待せずにはいられません!

◆この本をおすすめするのはこんな人!

* 居酒屋ぜんやシリーズを追いかけているファンの方
* 時代小説初心者の方
* 美味しい料理の描写に癒されたい、食に関する小説が好きな方
* 心温まる人情話、ほっこりする物語が読みたい方

◆各短編あらすじと解説(ネタバレあり)

ここからはネタバレを含みますので、未読の方はご注意くださいね。
ここからは5つの短編の解説と私なりの感想です。

*春告げ鳥

只次郎が育ててきた鶯ルリオの雛が美声を放つようになり、その一羽を馴染みの旦那衆
の誰に譲るか、「ぜんや」で美味しい筍料理 を囲んで話し合うお話。
旦那衆がそれぞれの鶯への愛情をアピールする様子がなんともかわいく面白いです。
久しぶりに柏木殿が登場したり、姪のお栄ちゃんの今後が決まったりと、只次郎を取り巻く
人々の新たな展開も楽しめますよ。ルリオの雛が無事に育って一安心、という始まりですね。

*授かり物

常連の升川屋夫婦、特に妻の志乃さんが、息子の千寿(せんじゅ)のご飯に関する悩みを抱え、
夫婦喧嘩になってしまうお話。
子どもの食に関する悩みや夫婦間のすれ違いなんていうのはいつの時代も変わらないもの
なんですねえ~。
お妙さんがいつものように絶妙な距離感で仲裁に入ります。そして何より、
裏長屋のおえんさんが**待望の妊娠**をするというおめでたい出来事が!
食い意地の張っているはずのおえんさんが食欲不振…と思ったら、つわりだったんですね。
もう、このまま子宝には恵まれないのかな?なんて思っていたらなんと?
癒しキャラのおえんさん に、やっと子が授かって本当に良かったです。

*半夏生

只次郎に持ち込まれる縁談がメインのお話。
相手は以前、只次郎に熱を上げていた大店「三河屋」の娘、お浜。お浜が以前よりさらに
「積極的な娘」になっていて、ハラハラさせられます。
只次郎は武士の立場と商人になりたい夢、そしてお妙への想いの間で大きく「揺れ動きます」。
彼の葛藤や、武士という身分があるからこそ周りから一目置かれていることに気づく描写など、
只次郎の「心の動きがなんともリアル」で、読んでいて応援したくなりました。
この縁談が、停滞していた只次郎とお妙の関係に一石を投じたんですね。
人生の流れが変わるときって外部から何らかの予期せぬきっかけが必ずあるもの。

*遠雷

つわりでぐったりしていたおえんさんが、悪阻が軽くなって元気を取り戻す様子が描かれます。
「おえんさんはこうでなくちゃね」! そして、この章で大きな動きを見せるのがお浜。
只次郎との縁談について、まさかの「番頭と添わせることにした」と、あっさりと爆弾発言を
します。お妙さんの、女性たちの恋愛脳に引き気味な様子 や、「自分はもう恋など
しない…?」といった気持ちも描かれています。ここでお浜が身を引いたことで、
只次郎とお妙さんの関係はどうなるのか…と次への期待が高まります。

*秋の風

お浜との縁談が解消された只次郎。三河屋の思惑(番頭を婿にするための当て馬)に
「まんまと当て馬にされた」 ことに気づきます。只次郎はついに「心を決め」、
お妙さんに想いを伝えようとしますが、そこでなんと升川屋の邪魔が入って残念*なことに…!
このラストシーンには思わず「爆笑」 しちゃいました。周りのキャラクターたちの反応も
面白いんです.結局、二人の関係は「微妙に近づいたような離れたような」、「なかなか、
先が見えない」まま、次巻へ持ち越しです。もどかしいですが、このじれったさがシリーズの
楽しみでもありますね。

ちなみに、以前から心配だった善助の死の謎は、この巻までには解けているようです。
ただのほほんとしているだけでなく、過去にまつわる謎解き要素があるのも、
このシリーズのミステリーという「いい味」だと思います。

◆まとめ

『ふうふうつみれ鍋 居酒屋ぜんや』は、美味しい料理と温かい人情、
そして気になる恋模様がギュッと詰まった一冊でした。

読み終えたら、きっと心が温かくなっているはずですよ。

この記事が、あなたの次の「読みたい本」を見つける参考になれば嬉しいです。