読むと身も心もすぅっと軽くなる女性作家あさのあつこの時代小説

●あらすじ・内容

人は、どこか緩めないと生きていけない。五歳の時に光を失い、揉み療治を生業としているお梅。市井の人々に大評判で、一年先まで申し込みが埋まっている。ところが今すぐ主の腕が動くよう療治してほしいという武士が現れた。お梅でなければ駄目なのだと。武士から「張りつめた者」の気配を感じ取ったお梅は、三日後、主のもとへ向かう!

●おすすめどころ・感想

・ファンタジー?お梅には相棒がいる。人には大きな白い犬に見える十丸と人には天竺鼠に見える先生。

この二人は人でも犬でも鼠でもない。ではいったいなんなのかは深く考えない方がいいようだ。

でもこの二人がいなければ天才的な揉み師としてのお梅はないし、揉み師の仕事もお梅一人では限界がある。

この二人?の存在は物語をより深く、広くしています。

胸中を語った人は、妙にすっきりした物言いになり、憑き物がおちたみたいな顔になる。

中にためていたものを外に出すと人は身も心もすっきりするもの。

お梅が強張った物をもみほぐして外に出やすいようにしてやる。

本当はそうなる前にため込んだものは少しずつでも外に出していいた方がいい。できればため込まないようした方がいい。

人は知らず知らずのうちに悩みなどため込んでしまうもの。

だからいらないものは外に吐き出すことを意識していないといけない。

・「諦めてはなりません。駄目です。」諦めるとは目を閉じる事。だから、道が見えなくなる。

いつも諦めが間違っているとは限らないが、ほとんどのことは諦めてはならない。

諦めなけれは道は見つかるもの

・心のままに生きる。それがどれほど難儀なことか、お梅だってわかっている。

心のままに生きることが正しいわけでも、幸せなわけでもないとも解している。

けれど、人は心に背いて生き続ければ必ず歪む。心身がねじ曲がり、軋む。開ければ折れて、砕け散る。

自分の気持ちに素直に生きることはとても大切だが、とても難しい。

心のままに生きるとはともすると自分勝手に生きることになってしまいそうだが、そうではない。

立場や環境に縛られて身動きが取れなくなったら自分の心の本当を思い出そう。

・「もし、叶うなら全てをすてて新たに生きてみたいとは望みます。」本音を語ることは大切

本音をださないと自分の本当の心にうそをついたような状態で生きていく事になってしまう。

本音が誰を傷つけることがあるかもしれない。それでも自分を犠牲にしてはいけない。

●この本をおすすめする人

頑張ってる人・・・人はどこか緩めないと生きていけない。そのことを天才的な揉み師のお梅が教えてくれます。

●著者プロフィール

あさのあつこ:1954年岡山県生まれ。「バッテリー」で野間児童文芸賞、「バッテリーエ」で日本児童文学者協会賞、『バッテリーエ〜VI」で小学館児童出版文化賞、『たまゆら』で島清恋愛文学賞を受賞。著書に『花宴』『かわうそ』『ハリネズミは月を見上げる』「アスリーツ』など。シリーズに「おいち不思議がたり」「弥勒」「闇医者おゑん秘録帖」「燦」「えにし屋春秋」「Team・HK」「グリーン・グリーン」などがある。引用:単行本著者紹介より

●まとめ

お梅は目が見えない。気配を感じたり、音を聞いたりする能力は見える人には想像のできない領域にある。本人が見えないことをなんとも思っていない様子。お梅にしか見えないものが見え、もみほぐしてゆく。そんなお梅の姿をみて、言葉をきいているだけで身体も心もかるくなるような気分になれます。