●あらすじ・内容
本所亀沢町にある「おけら長屋」は騒動の宝庫だ。大家の徳兵衛、米屋奉公人の万造、左官の八五郎、後家女のお染ーひと癖ある住人が入り乱れて、毎日がお祭り騒ぎ。そんなおけら長屋に、わけあり浪人の島田鉄斎がやってきて・・・。貧しいくせにお節介、そそっかしいけど情に厚い。そんな庶民が織りなす、江戸落語さながらの笑いと情緒にあふれる連作時代小説。文庫書き下ろし。引用:裏表紙より
おけら長屋には味のあるキャラクターがそろっていて目が離せません。すぐに「おけら長屋」の大ファンになっちゃいました。
●短編ごとのおすすめどころ
だいくま・・・米代、魚代、家賃、酒代をことごとく払わず踏み倒そうとする大熊という迷惑な住人がいた。
迷惑をかけられているおけら長屋の面々は団結して大熊には物を売らないように動き、そのため買い物ができなくなり、生活に窮し追い込まれた大熊一家は身投げをしてしまった。逆に人でなしとまわりから噂されるようになってしまったおけら長屋の人たち・・・このままおけら長屋の住人は人殺し扱いされるのか・・
なぜだか最後には万蔵の流す涙にもらい泣き?!
かんおけ・・・先の事を考えては何もできなくなってしまいます。素晴らしいことではありませんか。先のことなどずに行動する。真実はそこにあるのではないかと・・・これからおこることはその時また考えればよい。自分たちの振る舞いが天に恥じないことならばなんとかなるはずです。鉄斎はいつもいいことを言ってくれンるんです。
もののふ・・・武士はお家第一。どっちに転んでもだれも幸せにならないのが仇討だ。運命を変えることはできませんが、人生を変えることは出来るはずです。誠剣塾の門下生二人が仕官をめぐって真剣での果し合いに。鉄斎がこの果し合いをどのように丸く収めるのかが見どころ!この話も涙の後、最後はくすっとさせてくれます。
おかぼれ・・・うぶな久蔵と何か訳あり後家のお染さん。のこ二人の恋が盗賊一味を一網打尽にする??おけら長屋には恋ばなもありますよ。
はこいり・・・大店のお嬢様の花嫁修業はおそろしい。お里が務める美濃吉の手代頭とお里の泣けて笑える話。ほっこりできますよ。
ふんどし・・・相撲大会に出ることになったおけら長屋。負けず嫌いっで見栄っ張りの江戸っ子の代表のような万造と松吉とこの二人にまんまとのせられて相撲大会に出ることになったおけら長屋の住人達。この相撲大会をめぐってひと悶着、ふた悶着おこり、今度はさすがのおけら長屋も大ピンチに!?
●この本をおすすめする人
とにかく面白い本を読みたい人・・・文句なしにおもしろい。そしてすらっとすぐ読めます。万造、松吉をはじめとしたおけら長屋の住人が次にどんな騒動をおこしてくれるのか?どんな騒動に首を突っ込んでいくのか??必ずすぐに2が読みたくなります。
泣きたい人・・・おけら長屋の住人は本当に泣けてくるくらいいい人達なんです!
笑いたい人・・・おけら長屋の住人は本当に笑っちゃうくらいバカなんです!!
ただし、通勤電車で読むのはお勧めしません(笑)
●著者プロフィール:畠山健二(はたけやま けんじ)
1957年東京都目黒区生まれ。墨田区本所育ち。演芸の台本教筆や演出、週刊誌のコラム連載、ものかき塾での講師まで精力的に活動する。著書に「下町のオキテ』(講談社文庫)、『お笑い裏グルメ帳』(双葉社)、「落語歳時記」(文化出版局)など多数。2012年「スプラッシュマンション」(PHP研究所)で小説家デビュー。日本文芸家クラブ会員。 引用:文庫著者紹介より
●まとめ
江戸の長屋はこんなにもにぎやかで楽しいものだったのか。笑えて、泣ける。電車の中では絶対読んではいけない小説。喧嘩っ早さや人情の厚さなど江戸っ子の人の好さがにじみ出てる連作短編シリーズの第一弾。「薄情」と「野暮」と言われる事だけは我慢ならない江戸っ子、なかでもおけら長屋の住人達は江戸で一番その特徴を持っている。読み終わった後は、泣いて笑って本当にすっきりすること間違いなし!!