華やかな宮廷生活から一転して、国家存亡の危機に直面する悲劇の王妃
●あらすじ・内容
フランス革命によってヴェルサイユ宮殿の栄華は過去のものとなった。
貴族たちは財産を奪われ、特権を剥奪され、次々と裁判にかけられる。
王と王妃の処刑を要求する民衆の声は、日増しに高くなって行く。
激しい愛を胸に秘め、フェルセンは王妃救出を必死に画策するのだが。
苛酷な運命の中、愛と優雅さとを失うまいとする悲劇の王妃の生涯を、円熟の筆に描き出す華麗な歴史絵巻。
引用:文庫裏表紙より
●読みどころ
フランス革命の嵐の中で
フランス革命の激動が物語を覆い尽くします。民衆の怒りがヴェルサイユ宮殿に迫り、マリー・アントワネットは華やかな生活を失うことを余儀なくされます。革命家たちの激しい批判、夫であるルイ16世との絆の試練、そして愛する子供たちを守るために戦う姿・・・。それらは単なる王妃としてではなく、一人の母親、一人の女性としての葛藤を浮き彫りにします。
愛と信仰に支えられた最期の日々
マリー・アントワネットの最期の場面は、特に印象的です。ギロチン台へ向かう彼女の足取り、その時々の心情を遠藤周作は細やかに描写しています。彼女の信仰心や内面的な強さは、困難な状況下においても彼女を支える柱となります。この部分は、遠藤作品特有の宗教的テーマが色濃く反映されており、胸に深い感動を刻みます。
王妃の物語が問いかけるもの
『王妃マリー・アントワネット』下巻は、単なる歴史の記録ではなく、人間の本質に迫る物語です。運命に翻弄されながらも、自らの信念を貫き通すマリー・アントワネットの強い姿は、現代の私たちにも生きるヒントを与えてくれます。
●こんな人におすすめ
歴史上の悲劇的な人物に興味を持つ方や、フランス革命という激動の時代を深く知りたい方に特におすすめです。
また、逆境の中で自らの信念を貫く姿に感動を覚える方や、愛や信仰が困難を超える力となることに関心を抱く方にも響く作品です。
●著者プロフィール
東京生れ。幼年期を旧満州大連で過ごし、神戸に帰国後、11歳でカトリックの洗礼を受ける。慶応大学仏文科卒。フランス留学を経て、1955(昭和30) 年「白い人」で芥川賞を受賞。一貫して日本の精神風土とキリスト数の問題を追究する一方、ユーモア作品、歴史小説も多数ある。主な作品は『海と毒薬」『沈黙」『イエスの生涯」「侍」「スキャンダル」等。’95(平成7)年、文化勲章受章。’96年、病没。引用:文庫本カバーより