●あらすじ・内容
突然爆発した十勝岳の泥流は開拓部落に襲いかかり、一瞬にして、家族の命を奪い、田畠を石河原に変えた。地獄と化した泥流の地から離散していく人々もいるなかで、拓一・耕作兄弟は、祖父・父の苦労の沁み込んだ土地を、もう一度稲の実る美田にしたいと、再び鍬を手にする。そんな彼らに、さらに苦難が襲いかかる。苦闘の青春を描き、人生の報いとは何かを問う感動の完結編。引用:文庫裏表紙より
●おすすめどころ・感想
明治30年代に福島から上富良野に入植してきた拓一・耕作の祖父石川市三郎一家。苦労して開拓した土地や家や家族を大正15年の十勝岳の噴火でおこった泥流に一瞬にして奪われてしまった。なぜ真面目に生きている人がこんな苦難を経験しなければいけないのか。そんな苦難に負けずに真面目に一生面命に生きる姿には何度も何度も感動し、涙しました。
拓一のいちずにまじめに生きる姿には弟の耕作も尊敬しつつかなわないと感じます。拓一はだれからもいい人だと言われ正しく生きているのに父親を早く亡くし、母と別れて、好きな福子は深雪楼に売られ、苦労して復興させようとしたが稲は根づかず、あげくの果てに骨をおられて、なぜこんな不幸にあうのかとだれもが思う。それでも拓一は誰に怒るでもなく、責めるでもなく自分が正しいと思った事を信じて生きている。ほんとにこんなにできた人がいるのかという位拓一のまっすぐな真面目さには感動しました。
耕作が遠足の時にいつかはこの村を離れていくかもしれない生徒たちにこんな話をしてました。「いいか、よく聞くんだ。自分たちのふるさとを胸に焼き付けておけって言ったのは人間として大切なことなんだ(中略) これからつらい目にあったりすることが多いかもしれない。そんな時にな、この広大な景色を思い浮かべて、勇気づけられるかも知れないんだ。人間はな、景色でも友達でも懐かしいものを持っていなければならん。懐かしさで一杯のものを持っていると、人間はそう簡単には堕落しないものだ。」懐かしさでいっぱいのものっていいなあと思いました。そして懐かしい人や風景というのは人を強くさせる力があるんだと。。。
どうして正しい人が困難や災難に何度もあわなければならないのかということを話して時に母・佐枝はこういいます。「・・・ですからね、苦難に会った時に、それを災難と思って嘆くか、試練だと思って奮い立つか、その受け止め方大事なのではないでしょうか」これを聞いたおじの修平は理解できないようでしたが拓一や耕作にはこのことがよくわかっていました。耕作は正しい兄が不幸な目にばかりあうのがどうしても許せなかったが、今はわかっています。
この世の中は善因善果、悪因悪果実が現実ではないことの意味をいろいろな人がかたら色々な言葉で語っています。
●この本をおすすめする人
まじめに生きている人・・市三郎、拓一、耕作、福子など一生懸命真面目に生きる姿は感動的です。
三浦綾子さんが好きな人・・氷点、塩狩峠など三浦綾子の代表作といえる作品は沢山ありますが、もしまだ読んでなかったら泥流地帯は絶対におすすめです。
●著者プロフィール
旭川生れ。17歳で小学校教員となったが、敗戦後に退職。間もなく肺結核と脊椎カリエスを併発して13年間の闘病生活。病床でキリスト教に目覚め、1952(昭和27)年受洗。”64年、朝日新聞の一千万円懸賞小説に『氷点」が入選、以後、旭川を拠点に作家活動。主な作品に『塩狩峠」「道ありき」『天北原野」「銃口」など。’98(平成10)年、旭川に三浦綾子記念文学館開館 引用:文庫裏表紙より
●まとめ
三浦綾子さんの本はどれもそうなんですが、とてもやさしい語り口でわかりやすい言葉で書かれていてとても読みやすい一冊です。人に何かを丁寧に伝えようとするやさしい三浦綾子さんの人柄が感じることができます。三浦綾子さんのファンもそうでない人もおすすめです。