江戸が舞台の読みやすいおすすめ時代小説。時代小説初心者にもおすすめ!

●あらすじ・内容

老武士がたった一人で闘いをいどんだのは大名行列だった!その訳はいったい何だったのか!?

豊後国森藩から奉公を解かれ、浪々の身となった赤目小籐次、四十九歳。彼には胸に秘する決意があった。旧主・久留島通嘉の受けた恥辱をすすぐこと。相手は大名四藩。備中次直二尺一寸三分を手に、小籐次独りの闘いが今、幕を開ける。時代小説ファンを驚喜させた小籐次シリーズ。引用:文庫裏表紙より

●おすすめどころ・感想

時代小説の新たな魅力をみせてくれる、佐伯泰英『酔いどれ小籐次一 御鑓拝借』

『酔いどれ小籐次一 御鑓拝借』は、時代小説好きはもちろん、これまで時代小説に触れたことがない方にも自信を持っておすすめしたい一冊です。この物語は、剣豪であり酒豪の浪人赤目小籐次が武士としての矜持をつらぬく人間ドラマと冒険が交錯するエンターテインメントです。物語の概要や読みどころ、そして50代の私たちがこの本から得られる令和を生きるヒントを紹介します。

小籐次の人間味に共感

小籐次は、かつて仕えていた藩からはなれ浪人となった身。世間的には落ちぶれた存在ですが、彼の一見無茶に見える行動には筋が通った理由がありました。武士としての誇りや意地を持ち続けて、やるべきことをなすために最善を尽くそうとする姿に勇気をもらえます。現代社会でも、失敗や挫折はつきものです。しかし、小籐次のように「流れに逆らわず、その場でできることをする」という生き方を見ていると、肩の力を抜いて前に進むヒントを得られるでしょう。

剣豪・赤目小籐次
浪人となった小籐次はたった一人で大名行列と戦い、またその大名の藩士から命を狙われたりして幾度となく剣を抜く場面に立たされます。そのたびに剣豪としての腕を見せつけますが、ただ強いだけではありません。戦う理由や背景が深く描かれることで、読者の心に小籐次の魅力が深く残るでしょう。

忘れられない過去を大切にする姿
小籐次はかつての藩主から受けた恩を忘れることはできませんでした。かつて小籐次の命を救ってくれた恩をその子である今の藩主に変えそうと、藩主のうけた恥辱をすすぐためだけにたった一人で闘いを挑むその彼の姿は、私たちが人生で大切にすべきものに向き合うことの大切さを教えてくれます。

人の縁を大切にする心
小籐次が出会う人々との縁が、彼の闘いや人生に欠かせないものとなっていきます。助け合い、時には対立しながらも、関わった人々が後々の物語に大きな影響を与えます。この描写を通じて、人とのつながりの大切さを再認識させられます。

●この本をおすすめする人

中高年の方、50代のあなたにおすすめ。主人公の小籐次は49才。主人公と同世代に小籐次の奮闘ぶりは心にきっと響くはず。

●著者プロフィール

佐伯泰英(さえき・やすひで)1942年、北九州市生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒。デビュー作『闘牛』をはじめ、滞在経験を活かしてスペインをテーマにした作品を発表。99年、時代小説に転向。「密命」シリーズを皮切りに次々と作品を発表して高い評価を受け、<文庫書き下ろし時代小説>という新たなジャンルを確立する。おもな著書に、「居眠り磐音」「酔いどれ小籐次」「新・酔いどれ小籐次」「密命」「吉原裏同心」「吉原裏同心抄」「夏目影二郎始末旅」「鎌倉河岸捕物控」「交代寄合伊那衆異聞」「古着屋総兵衛影始末」「新・古着屋総兵衛」「空也十番勝負青春篇」各シリーズなど多数。2018年、菊池寛賞受賞。引用:文庫カバーより

●まとめ

『酔いどれ小籐次一 御鑓拝借』は、読みやすい文章とテンポが良さが時代小説初心者にとってもとても読みやすい一冊です。また、剣豪小説としての爽快感や江戸時代の生活描写、そして人間関係の温かさといった要素がバランスよく詰まっています。時代小説としての楽しさに加え人生に迷ったり不安を抱えたりする私たちに温かなメッセージを投げかけてくれる作品です。小籐次の生き方にふれることで読後には、少し肩の力が抜けた自分を感じられるでしょう。