味しい料理の裏で真実が明らかに!
坂井希久子『あったかけんちん汁 居酒屋ぜんや』徹底紹介

時代小説ファン、美味しい料理が登場する物語が好きな方必見!
今回は、坂井希久子さんの人気シリーズ

恋愛あり、ミステリーありで一見時代小説のこの作品、恋愛小説でもあり、おすすめミステリーとしても

紹介できるおもしろい小説です。

「居酒屋ぜんや」の第6巻『あったかけんちん汁 居酒屋ぜんや』をご紹介します。
心温まる人情と、お腹が空いてしまうほど美味しそうな料理、
そしていよいよ核心に迫る物語の展開が魅力の一冊です。

◆『あったかけんちん汁 居酒屋ぜんや』あらすじ概要

『あったかけんちん汁 居酒屋ぜんや』は、坂井希久子さんによる
「居酒屋ぜんや」シリーズの第6巻にあたる時代小説です。

舞台は、江戸の神田花房町にある居酒屋「ぜんや」です。美人女将のお妙が営むこの店には、
美味しい料理を求めて様々な人々が集まります。
この第6巻では、亡き夫・善助の過去について新たな疑念にとらわれ、
眠れない夜を過ごすお妙の姿が描かれます。そんな折、店の常連客である菱屋のご隠居に
炉開きでの懐石料理を頼まれたお妙は、幼い頃に習っていた茶の湯の経験を思い出しながら、
その腕を振るいます。
この巻は、物語が大きな山場を迎える重要な一冊です。
お妙の亡き夫・善助の死の真相、そして用心棒・草間重蔵の過去や素性が
次第に明らかになっていきます。

◆この本のおすすめポイント3選

『あったかけんちん汁 居酒屋ぜんや』の魅力を3つご紹介します。

1.読めばきっとお腹が空く!
彩り豊かな絶品料理の数々 このシリーズの最大の魅力の一つは、
作中に登場する美味しそうな料理の描写です。お妙が心を込めて作る料理は、湯葉の擂りながし、
かますの昆布締め、牡蠣の松前焼きなど。幼い頃の茶の湯の経験を活かした懐石料理の場面もあり
「上品で爽やかな魴鮄のあら汁」など、読んでいるだけで香りや食感が伝わってくるようです。
つらい時こそ、美味しいものを食べて笑ってほしい。
お妙の料理には、そんな優しい心遣いが込められています。

2.いよいよ核心へ!
善助の死と重蔵の過去が明かされる物語の山場 シリーズが進むにつれて匂わされてきた、
お妙の夫・善助の死の真相が、この巻でついに明らかになります。
また、ぜんやの用心棒である草間重蔵の素性や過去も語られ、物語はシリアスで緊迫した
展開を見せます。長い間読者の気になっていた謎が解ける、
シリーズにおける重要なターニングポイントです。

3.魅力的で人間味あふれる登場人物たちの交流と成長
美人女将のお妙、預かった鶯を育てて家計を支える武家の次男坊・林只次郎、
そして隻眼の用心棒・草間重蔵。主要人物たちがそれぞれに過去や悩みを抱えながらも、
「ぜんや」を通じて交流し、少しずつ変化・成長していく姿が描かれます。
特にお妙と只次郎の関係性の変化や、只次郎が武家社会の型に押し込められそうに
なりながらも自分の生き方を見出そうとする姿には関心がよせられます。

◆この本はこんな人におすすめ

坂井希久子さんのファンの方.

•時代小説、特に人情ものや料理が登場する作品が好きな方.

•美味しい料理の描写を読んで癒されたい、お腹を空かせたい方.

•登場人物の成長や人間ドラマを楽しみたい方.

◆著者プロフィール

坂井希久子(さかい きくこ) 1977年、和歌山県生まれ。同志社女子大学学芸学部卒業。
2008年に「虫のいどころ」で第88回オール讀物新人賞を受賞。 2017年、
『ほかほか蕗ご飯 居酒屋ぜんや』(ハルキ文庫)で第6回歴史時代作家クラブ賞新人賞と
髙田郁賞を受賞しています。 「居酒屋ぜんや」シリーズは、坂井さんにとって初の
時代小説シリーズであり、全10巻で完結後、「花暦 居酒屋ぜんや」として
新シリーズが始まっています。

◆各短編のあらすじ、解説、感想

『あったかけんちん汁 居酒屋ぜんや』は、以下の五つの連作短編で構成されています。
物語は寛政四年(1792年)秋から寛政五年(1793年)初午にかけての出来事を描いています.

1,「口切り」

•あらすじ: 寛政四年、神無月。菱屋のご隠居の炉開きで、お妙は懐石料理を任されます。幼い頃に
習っていた茶の湯の経験を活かし、湯葉の擂りながしや海老糝 Harwellなど、心温まる料理を振る
舞います。茶室には只次郎、菱屋のご隠居、俵屋、三河屋、三文字屋といった常連客が集まり、
お妙も交えて亡き善助の背後にいた近江屋について話し合います.

•感想: シリーズ冒頭で描かれたお妙の茶の湯の経験が、ここで活かされるのが良いですね。
美しい懐石料理の描写が印象的で、只次郎が順番を間違えたり「うまぁっ」と喜びの声を
上げたりする場面には思わず顔が綻びます。
物語としては、善助の死に関わる核心への調査が本格的に始まる章であり、
常連客たちの協力関係が強く描かれています.

2,「歩く魚」

・あらすじ: 霜月。林家では、父の隠居により兄・重正が当主となり、次男の只次郎に見合いの話が
持ち上がります. お妙への想いを忘れられない只次郎は苦悩し、深夜にお妙に会いに行った後、
家を出て用心棒の草間重蔵の住処に転がり込みます. お妙が出してくれた魴鮄のあら汁の
描写が美味しそうです.

・感想: 只次郎の人生における大きな転換期となる章です。 武家の次男という不自由な立場から
脱し、自分の足で歩き始めようとする彼の決断が描かれます。 家を出て重蔵と同居するという
以外な展開もあり、今後の只次郎の生き方や、お妙との関係性がどうなるのかが非常に気になります。

3「鬼打ち豆」

・あらすじ: 師走。酒に酔って寝ていた草間重蔵が何者かに襲われますが、只次郎が駆けつけて彼を
救います. この出来事をきっかけに、重蔵は過去について語り始めます。彼はかつて近江屋の
用心棒であったこと、そして善助の亡骸を神田川に流したのは自分であったことを告白します。
襲ってきたのも近江屋のならず者たちでした。

・感想: 用心棒・重蔵の素性が明らかになる衝撃的な章です. 彼がお妙の夫の死に関わっていた
という事実は、大きな驚きでした。 しかし、彼の語る過去や只次郎との交流を通じて、重蔵の
人間的な側面も垣間見え、彼に対する印象は少し変わりました。
ここで善助の死の真相に繋がる重要なピースがひとつ明らかに。

4,「表と裏」

・あらすじ: 寛政五年、正月. 重蔵は、お妙たちに善助の死について知っていることの全てを話す
よう求められます。 彼は、近江屋が善助を水槽に沈めて殺し、誤って神田川に落ちて事故死した
ように見せかけるため、自身が遺体を神田川に流すよう命じられたことを告白します。

・感想: 善助が事故死ではなく、他殺であったことが明確に描かれる章です。
重蔵の証言によって、善助殺害の実行犯と、遺体を隠蔽しようとした背景が明らかになります。
近江屋の悪辣さが際立ち、いよいよ黒幕との対決が近いことを予感させます。 重蔵の過去や、
彼がなぜこのような行動を取ったのかという事情も語られ、
彼の気の毒な人生に触れることになります.

5,「初午」

・あらすじ: 睦月。菱屋のご隠居をはじめとした常連の旦那衆は、近江屋を「ぜんや」におびき
出し、芝居を打って真実を吐かせようと計画します。 お妙は、かつて茶の湯で使った菓子を
模した、毒に見せかけた仕掛けを施した料理を用意。 那衆の迫真の演技と仕掛けによって、
近江屋は善助が田沼意次と反田沼派双方に贈っていた裏帳簿を握ったために殺害したことを
白状します。黒幕の正体も明らかになり、善助殺しの真相が全て解明されます。
物語は一区切りつき、春の兆しと共に只次郎と重蔵が裏店の子供たちと過ごす様子が心なごみます。

・感想: この巻のクライマックスであり、全ての謎が解き明かされる章です。
旦那衆がお妙と協力して悪党を追い詰める展開は、シリーズを通して描かれてきた「ぜんや」
の優しい絆の集大成とも言えます。 料理を使った仕掛けというのも、このシリーズらしい
解決方法で面白いです。善助殺しの全貌が明らかになり、一つの大きな区切りがついたと感じ
る結末でした。今後の只次郎やお妙、重蔵たちがどのような新しい道を歩むのかに期待です!

◆まとめ

『あったかけんちん汁 居酒屋ぜんや』は、美味しい料理と温かい人情、そして緊迫感のある
ミステリー要素が融合した「居酒屋ぜんや」シリーズの魅力が詰まった一冊です。
特にこの第6巻では、長らく読者の関心を集めてきた善助の死の真相や、重蔵の過去が
明らかになり、物語は大きな山場を迎えます。

個性豊かな登場人物たちの成長や関係性の変化も興味深く、読み進めるほどに彼らを
応援したくなります。

「居酒屋ぜんや」シリーズは善助殺害という大きな謎が解明されたことで一区切りついた
本作ですが、登場人物たちの物語はこれからも続いていきます。

ぜひこの機会に『あったかけんちん汁 居酒屋ぜんや』を手に取って、
「ぜんや」の世界に触れてみてください。