●あらすじ・内容

脳明晰で剣の達人。将来を嘱望された男がなぜ不遇の死を遂げたのか。下級武士から筆頭家老にまで上り詰め勘一は竹馬の友、彦四郎の行方を追っていた。二人の運命を変えた二十年前の事件。確かな腕を持つ彼が「卑怯傷」を負った理由とは。その真相が男の生き様を映し出す。『永遠の0』に連なる代表作。引用:文庫裏表紙

生涯をかけた男と男の友情物語。そしてもう一つ、命を懸けて果たした「約束」があった。

●どんな本? おすすめどころ・感想

人には天命というものがある。儂の足が生まれつきこんなふうだったのも天命だと思っている。儂がこの仕事をしているのも天命。もし天がお前に藩校とやらに行けと命じているなら、お前はいくことになる。そうでなければ行かない、それだけのことだ。竹籠の師匠が藩校に進むか悩む勘一に言った。人生には自分の努力でなんとかできることと、そうでないことがあるのは事実。天命というものがあるという事実を受け入れることができるか、できないかで人生って大きく変わるものだ。

百姓一揆と勘一の夢。百姓一揆は首謀者とその家族までもが磔の死罪で処刑されることになる。不作が続き、年貢がどうしても納められない百姓たちは殿様に年貢米軽減の直訴にでた。年貢米の軽減の要求はほぼ通った。しかし首謀者とその一族は死罪となる。最初から分かっていたことなのだ。誰かが死を覚悟して首謀者となり年貢米軽減の直訴をするしか百姓たちの生きる道はなかった。百姓たちも命がけだったのだ。勘一は一揆の一部始終をみて多くの新田ができる干拓という大事業を本気でやらねばと考えた。

・彦四郎と勘一はお互いに家中一の侍だと思っていた。剣や学問においては彦四郎にかなうものは家中にいない。それは誰もが認めること。一方で彦四郎は勘一のことを家中一の侍だと家で話をしていた。ある日、勘一が彦四郎のことを剣と学問が誰よりも優れているとほめると、彦四郎の家の下女みねは彦四郎が素晴らしいのは剣や学問ができるからではない、とはっきりと勘一に言った。勘一ははっとした。その通りだ。彦四郎の真の美点はそこではない、彼の人間としての度量と見事さは剣や学問で推し量れるものではないのだ。そのことをはっきりと認めているみねという女も人をしっかり見る目がある人物ということだ。

●この本をおすすめする人

出世したい人
二人の武士の友情の物語でもあるが、下士でありながら夢をもってそれをかなえようという強い思いと努力で筆頭国家老にまで上り詰めた出世物語でもあります。

●著者プロフィール 百田尚(ひゃくた・なおき)

1956年、大阪生まれ。同志社大学中退。放送作家として人気番組「探偵!ナイトスクーブ」など多数を構成。50006年、太田出版より刊行された『永遠の 0」で作家デビュー。同作は映画化され、関連書籍も500万部を超える大ヒットとなった。”13年「海賊とよばれた男(上下)」(講談社)で第10回本屋大賞を受賞。他の著書に『輝く夜」「風の中のマリア」『ボックス!(上下)」(すべて講談社文庫)、「錨を上げよ」(講談社)、「夢を売る男」(太田出版)などがある。引用:文庫カバーより

●まとめ

幼い頃からの親友の勘一と彦四郎。二人が出会ったきっかけは父の死を前にして泣いている勘一に「泣くな、武士の子がなくものではない」と仁王立ちにして言った時から始まった。その友情がずーっと死ぬまで続くことになるとは。彦四郎は自分の人生を勘一のために、勘一の夢にかけた。友のためにここまでできる男ってすごいと。しかし実は彦四郎にはもう一つ命を懸けて守るべき約束があった。