キリスト教作家三浦綾子さんが初めて書いた歴史小説
この本のおすすめポイント
●父光秀の人柄が素晴らしい
玉子が12才の時、母のあばたがおかしいと口にした時の光秀の玉子にたいする教えは心打たれました。優しくもありながら人として大事なことを厳しく教える光秀の人柄にとても好感がもてました。
「よいか人間を見る時はその心をみるのだ。決して顔がみにくいとか片足が短いとか目が見えぬなどと言って卑しめてはならぬぞお玉。人間の価値は心にあるのじゃ。」
●優秀すぎる人間はたたかれる
あまりにも光秀の進言は的中し過ぎた。的中する度信長は光秀という男の読みの深さには舌を巻き、それが忌々しくもあった。光秀が自分を見透かしているようで腹に据えかねた。光秀に対するこの思いが信長を怒らせ、不安がらせて光秀を打ち据えることになる。まわりの誰もがなぜ信長が怒って光秀をうちすえているのかわからなかった。光秀がこれほど賢くなかったか、その賢さを信長に見せていなかったら本能寺の変はなかったかもしれない。
●人は恐れがなくなると強くなる
門徒宗の抵抗に苦労していた時細川藤孝とキリシタン大名高山右近の会話がある。この時の右近の言葉が宗教こそちがうが信仰には力があることを物語っている。
「信仰のことはよくわからぬが、武士よりも門徒宗の結束は実に硬うござるな。なぜでござろうの、右近殿」 「それは御仏を信ずる彼らにはこの世には怖いものがないからでござらぬか」
●命は自分のものではない?
命は天主からあずかったもの。自分のものではないと玉子はいう。だから返すべき時に天に命を返すことは怖いことではない。心からこう言えるガラシャの真の強さには感動!
この本をおすすめする人
・歴史小説、時代小説が好きな人には戦国時代を女性を主人公として描かれている「細川ガラシャ夫人」をおすすめします。女性として、キリスト教信者として戦国時代を生きた「お玉」が生き生きと描かれておりすらすら読めます。
・三浦綾子の氷点、続氷点が好きな人にもおすすめする一冊。 三浦綾子が初めて書いた歴史小説の「細川ガラシャ夫人」。キリスト作家 の三浦綾子さんらしさが随所にでている。洗礼を受ける前のキリスト教に対する姿は三浦綾子さんご自身と重なって見える部分がありま した。
三浦綾子プロフィール
年旭川生まれ(1992-1999)のクリスチャン作家。17歳で小学校教員となったが、敗戦後に退職。肺結核と脊椎カリエスを併発し13年間の闘病生活。入院中にキリスト教に目覚め1952年に洗礼を受ける。1964年朝日新聞の1千万円懸賞小説に「氷点」が入選し、以後旭川を拠点に作家活動。
まとめ
父光秀の謀反により幽閉生活をおくらなければならなかったガラシャ。その幽閉生活の中でキリスト教と出会い、受洗する姿はキリシタン作家の三浦綾子さんが闘病中にキリスト教と出会い、徐々に信仰を強めやがて洗礼をうける姿と重なりました。戦国時代を舞台に父やお家第一という夫などに翻弄されながらも強く信仰に生きたガラシャ夫人の姿には感動です。