女性作家あさのあつこさんが描く時代小説は女性が主役。

●あらすじ・内容

天才揉み師”お梅”はどんな痛みや凝りもやさしくもみほぐしてくれる

五歳の時に光を失い、揉み療治を生業としているお梅。揉んだ人々の身体は、全てこの指が覚えている。触れさえすれば、いつどこで揉んだあの人だと言い当てられるほどだ。本来なら半年待ちだが、一刻の準子もない思者が現れた!頭風を抱えるお清は、耐え難い痛みに苦しんでいる。身体に潜む「淀み」を感じとるお梅。お清を悩ませる原因とは?あなたの身体と心の闇までほぐします。引用:文庫裏表紙より

●おすすめどころ・感想

お梅は今まであったこともないお加代さんのことを少しの間そばにいただけて見事に言い当ててしまう。

「お加代さんって、とても頼りがいのあるお方なのでしょうか。豪胆というか、やるべきと決めたら何があってもやりぬく、そういうお人柄みたいですね」

目も見えないのにあったばかりの人のことがなぜそんなにわかるのか。お梅は目が見えない分なのか気配を感じとる力が常人とは違うレベルにあった。お梅は見たり、聞いたりするのとは違って人そのものを気配で感じとってしまうのだった。

~心に残る一文~
『身体と同じく心も凝るのだ。身体が凝って、心も硬く強張るとは言い切れない。しかし、心が凝れば身体は必ず常とは違う様相を示す。』

だからこそ話すことが大切なのだ。

話すことで心にたまったものを少しでも吐き出すことができれば心はほぐれる。

心の強張りが少しでもほぐれたら必ず体も楽になるものなのだ。

『一緒にいて楽しい相手、一緒にいたいと思う相手じゃないと本当の友だちにはなれないよね。』

あの子はぼて振りの子だから、あの子は貧乏長屋に住んでいいるから遊んじゃいけない。

大店の子だから仲良くしようなんて考えで友達を選んでいたら本当の友達はつくれない。

心を許し合える相手とだけ仲良くすればいい、友だちになればいい。

そういうつき合いができる相手は一生の宝になる。

目先の損得だけでつながった間には決して生まれてこない絆なのだ。

『真っ当にしゃんと生きている者ってのは、どこかで誰かを支えてるもんでやすよ。当の本人が気がついてなくてもね。逆さまに、真っ当でないやつは、どうしても他人を傷つけたり、不幸せにしてしまう。』仙五郎親分の言葉。

お梅はとてもしゃんと生きている。

目が見えないからと言って言い訳することもなく、できることをちゃんとして、見えないからこそそなわった力は人のために役立てようとする。

だから人はお梅を頼りにするし、逆にお梅の周りにはお梅を支えようとして集まってくるいい人たちもいるのだ。

●この本をおすすめする人

いやされたいあなた・・・特別な感覚をもったお梅があなたの日々のつかれを揉みほぐしてくれるような気分になれます。

●著者プロフィール

1954年岡山県生まれ。『バッテリー」で野間児童文芸賞、『バッテリーII』で日本児童文学者協会賞、『バッテリーI〜V』で小学館児童出版文化賞、「たまゆら』で島清恋愛文学賞を受賞。「NO.6」「おいち不思議がたり」「弥勒」「闇医者おゑん秘録帖」「針と剣 縫箔屋事件帖」「Team・HK」「グリーン・グリーン」などのシリーズがある。引用:文庫カバーより

●まとめ

不思議な力をもった揉み師のお梅。痛みや凝りをもった人々をお梅は特殊な力でもみほぐしていく。物語の中でお梅といつも一緒にいる犬の十丸と困った時に力になってくれる天竺鼠の先生。この二人はお梅をささえる頼もしい存在となっている。彼らの正体が本当は何のか?というところも江戸のファンタジーのにおいが感じられるのもこの小説の魅力です。疲れがたまって、一休みしたいときにおすすめの本です。