江戸時代を舞台にしたおいち不思議がたりの世界

江戸深川、菖蒲長屋に住む貧乏医師松庵の一人娘おいちは16歳。おいちは見えないものが見える特異な能力を持っている。時代小説にスピリチュアルな世界を取り入れた江戸の人情と不思議な出来事や事件にかかわりながらおいちが活躍し成長する物語。おいちの明るいキャラにも癒されます。

感想とおすすめどころ

●人間関係って昔からむずかしいもの
親子でも夫婦でも人と人の間って難しいもんですよ。一見仲の良い親子家族でも中に入るといろいろとあるものです。だから人間関係って大変だけどおもしろい。

●医者のおしゃべり
人は体と心身に内にたまったものはとにかく早めに外に出すに限るんだ。たくさん話してたまっているものを外に吐き出させることは大事、医者の仕事でもある。

●「病は気から」これは今も変わっていないんだ
心は体に結ばれている。望みを絶っちまった病人の手当て程むずかしいものはねえんだ。どんな難病でも心がくじけてねえうちは病に負けねえんだ。望みのある者は強えんだな。

●おいちこうやって自分をささえている
自分がだれの支えになっている。そう思えることがおいちを支えていた。

●人の艶ってどうしたらでてくる?
仙五郎親分がおいちに教えてくれました。不思議なもんでね艶ってのは本人が気づかねえ方が余計にれたりするもんですよ。

●やれることはやろう。でも思いあがってはいけない。
人が人に為せることなんて知れている。それを忘れるなといってるんだ。おまえがおまえの力で誰かを救いたいと思っているのならそれは思い上がりってもんだ。人一人を救うってのはそう簡単にできることじゃない。おれたちにできることは、おれたちに為すべきことを精一杯為す。それだけさ。人は何でも出来るわけではない。でも誰にでもできることは必ずある。それをコツコツとやることが大事だと。江戸時代も令和もここは変わっていないのだ。

●心にひびいた一文

「おれたちにできることは、おれたちに為すべきことを精一杯為す。それだけさ。」

おすすめする人

時代小説もファンタジーも好きな人。

おいちにはこの世の人ではない人の声が聞こえる不思議な力がある。見習い医者のおいちはその不思議なちからをつかいながら成長していく。

著者プロフィール

1954年岡山県生まれ。青山学院大学文学部卒業。小学校の臨時教師を経て作家デビュー。「バッテリー」で野間児童文芸賞、「バッテリーⅡ」で日本児童文学者協会賞、「バッテリーⅠ~Ⅳ」で小学館児童出版文化賞、「たまゆら」で島清恋愛文学賞を受賞。主な作品に「TheMANZAI」、「NO.6」、「ガールズ・ブルー」、時代小説に「弥勒の月」シリーズ、「待ってる」、「燐」シリーズがある。引用:文庫カバーより

まとめ

2024年NHKでドラマ化された。松庵とおいちの親子関係とおいちの元気で明るいキャラクターとがとても気持ちがよく読みやすい小説になっている。