時代小説デビューにおすすめ!
佐伯泰英『子育て侍 酔いどれ小籐次(七)決定版』の魅力に迫る
時代小説と聞くと、難しそう、堅苦しそうと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、そんなイメージを覆し、多くの読者を魅了し続ける時代小説の大家、
佐伯泰英さんの作品は、まさに時代小説入門にぴったりです。
佐伯泰英さんは、1999年に初の時代小説『密命』を発表して以来、
その真に迫りながらも読みやすい筆致で絶大な人気を博しています。
特に「酔いどれ小籐次」シリーズは、文庫書き下ろし時代小説というジャンルを確立し、
2013年にはドラマ化もされた大ヒットシリーズです。
今回は、シリーズの中でも特に読者の心に深く響くであろう第7巻、
『子育て侍 酔いどれ小籐次(七)決定版』に焦点を当て、その魅力をご紹介します。
◆あらすじ(ネタバレなし)
物語の主人公は、赤目小籐次。身長が低く、50歳を目前にした風采の上がらない浪人ですが、
その実態は来島水軍流という凄まじい武芸の遣い手です。
シリーズ第7弾となる本作では、前巻で小籐次自身を狙った刺客・須藤平八郎が遺した赤子
「駿太郎」を育てるという、これまでにない新たな展開が描かれます。
子連れの刺客を斃した際、小籐次はその約定として、残された駿太郎を養育することになるのです。
武芸の達人である小籐次が、慣れない子育てに奮闘する姿は、読者の心を和ませます。
しかし、駿太郎の出生には、小籐次さえも知る由のない驚くべき秘密が隠されており、
物語は一層の緊迫感を増していきます。果たして小籐次は、新たな命を守り、
その秘密を解き明かすことができるのでしょうか。
そして、彼を狙う不穏な影は、この「子育て」にどのような影響を与えるのでしょうか。
◆本書のおすすめの読みどころを3つ紹介
1,ギャップ萌えする主人公・小籐次
「背が低く冴えない49歳の男」という、ぱっと見はかっこよくない主人公・小籐次。
しかし、その裏には「来島水軍流」という強力な武芸の腕前を秘めており、
「並外れた大酒のみにして武芸の達人」「爺ちゃんそのもの」のように一喜一憂する姿が描かれ、
「爺い侍の子育て奮闘記」として新たな一面を見せてくれます。
この人間味あふれるギャップこそが、小籐次の最大の魅力であり、物語に深みを与えています。
2,心温まる「子育て奮闘記」と人情味
『子育て侍』というタイトルが示す通り、本作の大きなテーマは「子育て」です。
血の繋がりがないにもかかわらず、小籐次が必死に駿太郎を育てようとする姿、
そして「周囲の人たちの協力のもとで」子育てに励む様子は、現代人が忘れがちな
「人と人とのつながり」や「人情味」を感じさせてくれます。
シリアスな活劇の合間に描かれる、温かく日常的な交流は、読者の心を癒し、
江戸時代の庶民の暮らしを想像させるでしょう。
3,緊迫感あふれる活劇と新たな謎
小籐次は、依然として彼を狙う「新たな刺客」に命を狙われています。
さらに、預かった駿太郎の「出生に驚くべき秘密が隠されている」ことが明らかになり、
物語はただの子育て物語に留まらない「緊迫の第7弾」としての魅力を持っています。
佐伯泰英さんの作品は、「迫力ある剣戟シーン」も魅力の一つです。
達人ならではの剣術が描かれることで、物語にスリルと興奮をもたらしています。
◆この本をおすすめする人
・時代小説を初めて読む方
佐伯泰英さんの作品は、「読みやすい時代小説」として高い評価を受けており、
初めて時代小説に触れる方でも安心して物語の世界に引き込まれることができます。
・心温まる人情物語や家族の絆を描いた作品が好きな方
「子育て侍」というテーマの通り、血縁を超えた絆や周囲の人々の温かい協力が描かれており、
「人生がもっと豊かになる」ような家族小説を求めている方におすすめです。
・ギャップのある魅力的な主人公が登場する物語に惹かれる方
見た目と実力のギャップ、そして強面な侍が見せる子育ての人間臭い一面など、
小籐次の多面的な魅力に触れたい方に最適です。
・ハラハラドキドキする展開と謎解きを楽しみたい方
小籐次を狙う刺客との死闘や、駿太郎の出生に隠された秘密など、
緊迫感のあるストーリー展開が好きな方には満足いただけるでしょう。
◆あらすじをもう少し詳しく(ネタバレあり)と感想
前巻で小籐次は、自身の命を狙う刺客である須藤平八郎を討ち果たします。
しかし、その際、死を賭した侍同士の「約定」として、平八郎の遺児である赤子の
「駿太郎」を預かることになります。 五十を過ぎた小籐次にとって、子育てはまさに
「奮闘記」と呼べるものとなります。彼は慣れない育児に悪戦苦闘しますが、長屋の
「周囲の女子衆」が時に呆れながらも、温かく世話をかって出てくれることで、小籐次も徐々に
子育てに慣れていく様子が描かれます。
小籐次が駿太郎の機嫌に「一喜一憂している様は爺ちゃんそのもの」でなごまされます。
しかし、駿太郎の母親は「とんだワケ有り」な人物であり、由緒正しい家の娘と
名もなき武士との間に生まれたため、駆け落ちもできなかったという悲しい過去が明かされます。
小籐次は当初、駿太郎を母親の許へ帰すことを考えていましたが、
それが叶わない状況であることが判明します。
その間も、小籐次の身辺には「不穏な侍の影」がつきまとい、彼の命を狙う「四家追腹組」からの
「新たな刺客」が登場します。武芸の達人である小籐次が、「たった3行で十数人を斬る」
といった描写もあり、アクションシーンの迫力は健在です。
そして、物語の核心として、駿太郎の「出生に驚くべき秘密」が隠されており、
それが小籐次の今後の運命を大きく左右する「緊迫の展開」へと繋がっていきます。
本作は「爺い侍の子育て奮闘記」という一面をもち、
小籐次の新たな一面が魅力的に描かれています。
特に、小籐次が駿太郎の世話に「苦労しながら(周囲の人たちの協力のもとで)育てる」姿は、
その「人情味」がよく伝わり、「江戸時代の情景を想像」させられ時代小説としても楽しめます。
また、「小藤次のすご技については行きつくとこまで行きついたか」という感もあり、
単なる殺陣の描写だけでなく、人間ドラマに重きが置かれているようにも感じられます。
シリーズ第7巻の本作では「新たな展開が始まる巻」という位置づけになっているようで、
小籐次の人生に新たな局面が訪れる期待感がますます高まっていきます。
『子育て侍 酔いどれ小籐次(七)決定版』は、ネット上でも多くの感想・レビューが
集まっており、高評価を得ています。
Amazon Kindle版では、74個の評価で4.4/5.0という高評価を獲得しています。
これは、本書が多くの読者に読まれて、
小籐次の新たな挑戦と、それに伴う人間ドラマに強く共感していることを示していると言えるでしょう。
◆まとめ
佐伯泰英さんの『子育て侍 酔いどれ小籐次(七)決定版』は、
深い人間ドラマと温かい人情が描かれた一冊です。
武芸の達人である小籐次が、まさかの「子育て」に奮闘する姿は、
新鮮な驚きと共感が感じられ、彼を取り巻く人々の温かさが、物語に大きな彩りを添えています。
また、駿太郎の出生に隠された謎や、小籐次を狙う刺客たちの存在が、
物語に緊迫感とスリルを与え、ページをめくる手を止めさせません。
佐伯泰英作品の魅力である「真に迫りながらも読みやすい筆致」は、
時代小説を初めて読む方でも、きっとこの世界に引き込まれることでしょう。