坂岡真の時代小説『うぽっぽ同心十手綴り 女殺し坂』(中公文庫)は、江戸の市井を舞台に、
臨時廻り同心・長尾勘兵衛が人情と正義の狭間で葛藤しながら事件を解決していく、
シリーズ第3作目です。

あらすじ・感想

江戸の町で、無骨だが情に厚い元同心が辻斬りに遭い、命を落とす事件が発生します。
その死に顔には、この世に未練を残した表情が浮かび、遺された妻の無念は計り知れません。
臨時廻り同心の長尾勘兵衛は、下手人を挙げるべく探索を始めますが、
事件の背後には思いもよらぬ巨悪の存在がありました。

勘兵衛は、十手持ちとして越えてはならぬ一線と、
正義を貫くために覚悟を決めねばならぬ瞬間に直面します。
正義とは何か、人の情とは何かを問いながら、勘兵衛は巨悪に立ち向かっていきます。
本作は、勘兵衛の人間味あふれる姿と、江戸の人々の生活を丁寧に描いた傑作捕物帳です。

おすすめのポイント3つ

1. 人情味あふれる主人公・長尾勘兵衛
勘兵衛は、無骨ながらも情に厚く、江戸の人々から信頼されています。
彼の人間味あふれる言動や、正義を貫く姿勢は、読者の共感を呼びます。
時代小説初心者でも感情移入しやすいキャラクターです。

2. 江戸の風情と生活感の描写
本作では、江戸の町並みや人々の生活が細やかに描かれています。
食事の描写や季節の移ろいなど、江戸の風情を感じられる描写が豊富で、
時代背景に興味を持つきっかけになります。

3. 一話完結の読みやすさ
本作は短編形式で構成されており、一話完結の物語が収められています。
通勤時間や就寝前など、短時間で読み切れるため、忙しい現代人にもおすすめです。
また、各話に伏線が張られており、読み進めるごとに物語の深みを感じられます。

『うぽっぽ同心十手綴り 女殺し坂』は、江戸の人情と正義を描いた時代小説であり、
初心者にも読みやすい構成となっています。
人間味あふれる主人公と、江戸の風情を感じられる描写が魅力です。
時代小説に興味がある方は、ぜひ手に取ってみてくださ