おすすめ時代小説の「本所おけら長屋」は第4弾も泣ける話あり、笑いあり、ほのぼのありの盛りだくさん!!

●あらすじ・内容

本所沢町にある「おけら長屋」は、いつも騒動ばかり。本所七不思議のひとつ、おいてけ堀で河童の捜索を始めた万造と松吉が巻き込まれた事件とは?島田鉄斎と因縁のある女スリが再び彼の前に現れて……。左官の八五郎の娘、お糸と文七の恋がついに決着?長屋で孤立無援となった松吉を、相棒の万造は救えるか!?人の優しさが心に染みる、笑いと涙の連作時代小説シリーズ、待望の第四弾。文庫書き下ろし。引用:文庫裏表紙より

●どんな本?(おすすめどころ・感想)

第四弾は5つの短編。どれも泣けて、笑える傑作です。
おいてけ
川で死体があがり、河童が引きずり込んだという噂がたつ。河童はいると松吉と万造はすっかり信じ込んでしまい河童を捕まえようとする。一方で、川で身投げをしようとする娘を鉄斎とお染さんが思いとどまらせて、おけら長屋につれてくる。すると意外なことに河童に話がつながっていくことに。人を守るために自分を犠牲にする、そんな情けの深い人がいっぱいいます。

あかいと
文七にことが気になるお糸。でも素直に自分の気持ちを文七に伝えることができなくて悩むお糸にお染さんが声をかける。お染さんは若い頃好きな男に自分の想いを伝えられずに後悔していたことがあった。「心に引っかかっていることがあるなら、自分ではっきりさせなさい。逃げちゃだめ。逃げたら、あたしのようになる。」人はどうしようか悩むとはっきりさせるのが怖くて逃げたくなる時がある。でも、そういう時は逃げてはいけない。今やるべきことから逃げてはいけない。今回はおけら長屋はどんな見事な連係プレーをみせてくれるのか?

すりきず
かつて鉄斎が足を洗わせた女すりのお駒とそのお頭であり母親がわりだったお露。二人とも足を洗いまっとうに生きていこうとするが、行き先は決まっていなかった。そんな二人に廻船問屋の東州屋はうちに来てほしいというが、躊躇するお駒の背中を鉄斎は背中をおしてあげる。”小駒さん、東州屋さんの言葉に甘えたらどうだ。お前さんのために言うんじゃない。お露さんのためだ。そばにいてやってほしい。本当の母親と思って面倒をみてやってほしい” 大事な人とはそばにいた方がいい。大切な人のために生きるものいい人生なんだと思う。

よいよい
島田鉄斎。おけら長屋でただ一人の武士。訳があっておけら長屋で浪人生活をしているが、剣術、人物ともに相当できる人物で誰からも一目置かれている。鉄斎の生き方、言動、ふるまいは人間関係に悩む人の参考になるのではないか。凡人であれば、何でもひけらかしたくなるものだが、達人は気配すら消すことができる。
優しさにふれると自分も自然と優しくなれる。鉄斎もおけら長屋でくらしていくうちに「おせっかい」という名の優しさが身についてきた。

あやかり
おけら長屋とお熊ばあさん。どちらもお人よし。今回は松吉の大事な猫が行方不明になってしまう。松吉と万造はだれも傷つけずに、誰にも損をさせずに誰もが納得のいくように大事な猫を取り戻す。お見事!松吉、万造と叫びたくなりますよ。

●この本をおすすめする人

笑いたい人・・「おいてけ」まじめにバカやってる松吉と万造は相変わらず絶好調。二人は最後になにをおいてけと言われるのか?

泣きたい人・・「あかいと」お糸と文七。じれったい恋物語。若い二人のいじらしさが涙をさそう。

温かくなりたい人・・「あやかり」だれも悪くない。だから誰も傷つけずにと考える松吉、万造は根はやさしい。

●著者プロフィール

畠山健二(はたけやま けんじ)1957年東京都目黒区生まれ。墨田区本所育ち。演芸の台本執筆や演出、週刊誌のコラム連載、ものかき塾での講師まで精力的に活動する。日本文芸家クラブ会員。著書に「下町のオキテ」(講談社文庫)、「お笑いグルメ帳』(双薬社)、「落語歳時記』(文化出版局)など多数。2012年「スプラッシュマンション」(PHP研究所)で小説家デビュー。文庫書き下ろし時代小説「本所おけら長屋」(PHP文芸文庫)が好評を博し、人気シリーズとなる。引用:文庫著者紹介より

●まとめ

第四弾では特に島田鉄斎がすばらしい。おけら長屋ではただ一人の武士。元々は黒石藩の剣術指南役であったが訳あって藩からはなれ気ままな長屋暮らしをしている。まじめでお堅い鉄斎がだんだんとおけら長屋に馴染んでいくのがいい。この人を主人公で物語ができそうな存在感がある。今やおけら長屋になくてはならない人物だ。