黒石藩藩主高宗がまたやらかしたり、騙される優しい人もでてくる、切ない恋物語あり。
第9巻も抱腹絶倒、涙腺爆発と大忙しの一冊です。
そして、どれもほのぼのとした温かい気持ちがわき出てきます。
●あらすじ・内容
金はないけど情はある、個性豊かな面々が揃う「おけら長屋」は今日も騒がしい。赤ー”と呼ばれる腰抜け武士の本当の姿は・・・..。おけら長屋に越してきた謎の女が怱然と姿を消したわけとは。吉原に乗り込んだお満は男と女の深い情話を知ることに。お糸と文七が陥った苦境を知った長屋の住人たちは、陰ながら走しー。笑いと涙と人情が満載のシリーズ第九弾は、ますます充実の五篤を収録。文庫書き下ろし。引用:文庫裏表紙より
●読みどころ
・まいわし
黒石藩の藩士が武士同士のけんかに巻き込まれてしまう。当然おけら長屋も絡んでくるが、今回は黒石藩が出てくるだけに鉄斎が主となっている。それと藩主高宗も。鉄斎の素直な気持ちがでてくる「修行などは何もしていない。無理をすることがなくなっただけのことだ。今は武士ではなく、ただ、一人の人として生きている。それだけのことだ。」江戸時代も現在も人はいろいろなしがらみの中で生きている。しがらみだらけのこの世の中で誰だって多かれ少なかれ無理をしているはず。武士の意地と意地がぶつかり合って、引くに引けなくなってしまう。きっかけはとても些細な事、冷静に考えれば命のやり取りをするようなことではない。武士にある面目っていう厄介なものを万松がどうな風に丸く収めるのか。
・おてだま
おけら長屋にお浅という30半ばくらいの物静かな女が越してきた。お浅はあまり長屋の連中とは深くかかわろうとはしない、どことなく謎めいた女だった。そのお浅がある日突然姿を消した。しばらくたっても行方は知れない。そうこうしているうちにどうやら大家の徳兵衛と隠居の与兵衛がお浅から金をだまし取られたのではないかという噂が流れてきた。真相はどうなのか?この噂に飛びついたのはもちろん万造と松吉だが、ここは鉄斎とお染が動くことになるが、真相はどうだったのか?
・すがたみ
お満の生家である木田屋の若旦那が吉原の花魁に入れ揚げてしまう。若旦那が入れあげた花魁の悲しく切ない鏡越しの恋。吉原の小さな恋物語。女先生お満の活躍も見どころです。
・かんざし
おけら長屋の面々のおっちょこちょいな早とちりから文七お糸の若い夫婦の心配事がおけら長屋の知ることになる。若い二人は頼ればいいものをすぐに人を頼ると一人前として認めてもらえないと思い、なかなか頼ることができない。そんな様子を見かねておけら長屋がうらで動く。
・うらかた
人助けのために裏で万松や鉄斎、お染が動く。使えるものは何でも使う精神でおけら長屋だけではなく色んな人にも助けてもらい、火盗改の役人まで使って悪徳商人を追い込んでいく。なんとも鮮やかなチーム戦です。
●こんな人におすすめ
癒されたい人・・・笑って、泣いて、そのうち涙が乾いたら自然と癒されています。どんな時でも癒されています。
●著者プロフィール
畠山健二(はたけやま けんじ)
1957年東京都目黒区生まれ。墨田区本所育ち。演芸の台本執筆や演出、週刊誌のコラム連載、ものかき塾での講師まで精力的に活動する。日本文芸家クラブ会員。著書に「下町のオキテ」(講談社文庫)、「お笑いグルメ帳』(双薬社)、「落語歳時記』(文化出版局)など多数。2012年「スプラッシュマンション」(PHP研究所)で小説家デビュー。文庫書き下ろし時代小説「本所おけら長屋」(PHP文芸文庫)が好評を博し、人気シリーズとなる。引用:文庫著者紹介より