天才ぶり、非常識ぶりが半端なない!北斎の「日常」
エンタメ歴史小説
●あらすじ・内容(どんな本?)
奇人変人、でも天才。その名を世間に森かす、江戸の大絵師葛飾北斎の絵への探求心は、
尋常ならざるものがある。そして、偏屈で一般常識なんぞ持ち合わせてはいないため、常識人で
ある弟子の常次郎をいつも困らせていた。足の踏み場もないほどに散らかっている部屋でも片付
けるなと叱り、生きている猫をもってこい、鼠を捕まえるなど、無理難題の毎日だ。
しかし「絵が好き」という共通点があるからこそ、師匠はぶっきらぼうでも弟子の成長を見守り、
弟子も怒りながらも尊敬の眼差しを送る。そんな愛あるおかしな日常を生き生きと描く物語。
引用:文庫裏表紙より
●読みどころ
・北斎から弟子への教え
北斎は弟子の常次郎に絵の描き方を教えることは無かったという。筆の使い方や描画の技術などは
一切教えないくせにある一つのことだけは厳しくした。それは「描きかけの絵を途中でやめるな。
絶対に最後まで仕上げて人にみせろ」ということ。これだけは何度も厳しく繰り返した。
受けた仕事は最後までやりとげろ、そして公にしろという風に読むとどんな仕事にも通じる
大切なことだ。
・もう一人の天才 お栄
北斎の娘お栄はまるで北斎を女にしたような性格で、飯炊きや繕い物などは全くできない女。
絵を描くこと以外は食べることも含めて全く興味がないというまさに「女版北斎」。
北斎からいつも「おーい」、「おーい」と呼ばれていたお栄はそんなにいつも「おーい」という
のなら私はお栄ではなく「おいう」ではないか、と自分の号を『応為(おうい)』にしてしまう。
やることなすこと北斎によく似た天才お栄の存在が常次郎をますますてんてこ舞いさせる。
・常人離れした引越癖や金銭感覚
北斎の引越癖は有名。基本的にものを片付けるということをしないので部屋にはごみがたまって
いくばかり。部屋にごみがあふれて生活できなくなると引っ越すという。これには大家も
頭を悩ませていたらしいが、実は意外なメリットもあったようだ。。。
金銭感覚も全く常識離れしており、ものの値段を知らない(興味がない)のでなんでも言い値で
買ったり、めんどくさいからといって財布ごと払ってしまったり。それで、いつも金がない、
金がないと言っていた生活力のない天才の日常は大変興味深い。
・名前
絵以外にはこだわりのない北斎は、自分の名前さえもこだわりがなかった。何度も名前を
変え続け、古い名前は弟子に売ったり、あげたりもしていた
・壺中天(こちゅうてん)
「絵」以外に関しては常識のない北斎だけに、たまにまともなことを言うと説得力がある。
北斎が好んでよく弟子たちにも話をしていたのが「壺中天」
●こんな人におすすめ
真面目な常識人・・・北斎やお栄の生き方から学べることがたくさんあるかもです。
●著者プロフィール
1978 年埼玉県生まれの一男一女の父。
メーカー勤務のかたわら、2015年頃から本格的に小説を書き始める。2019年、Nirone 名義で執筆
した小説「わたしのイクメンブログ」が漫画化(全3巻・完結)。2020年「松の廊下でつかまえて」
で第3回歴史文芸賞最優秀賞を受賞(「あの日、松の廊下で」に改題し文庫化)。
引用:文庫カバーより