読みやすくて、泣ける歴史小説だ!

●あらすじ・内容

本当は「討ち入りたくない」と思い悩んでいた内蔵助?大石内蔵助が等身大のリーダーとして描かれ、歴史や時代物に興味がある方はもちろん、現代のビジネスマンにも響く一冊。忠臣蔵を描いた新しい名作です。

筆頭家老の家に生まれ、一生裕福で平和に暮らせるはずだった大石内蔵助の人生は、主君が起こした松の廊下の刃傷事件によって暗転する。不公平な幕府の裁定を前に、籠城だ仇討だといきり立つ藩士たち。内蔵助は彼らをのらりくらりとかわしながら、「藩士どもを殺してたまるか!」とお家再興に向けて奔走する。しかし、下からは突き上げられ、上からはそっぽを向かれる四面楚歌。やってられるか、こんなこと!役割や責任なんて投げ出せたら楽になれるのに••….。人間・内蔵助を等身大で描く、新たな忠臣蔵。引用:文庫裏表紙より

●こんな人におすすめ

・リーダーとして悩んでいるあなたへ・・・赤穂浪士のリーダーとして知られる大石内蔵助の苦悩と決断が描かれており、現代のリーダーたちにも参考になるはず。

●よみどころ

◆ 内蔵助はなぜ「討ち入りたくない」のか?
松の廊下で起きた刃傷事件――ここから始まる藩士たちの混乱と「仇討ち」を求める熱気。しかし、筆頭家老である内蔵助は、家臣たちを無駄に死なせたくないと冷静に考えた彼の心情はこうでした。

「仇討ちが正義と言えるのか?お家再興のため、もっと現実的な方法を考えるべきではないか?」
忠義や武士道を絶対視せず、人間としての弱さや葛藤をリアルに描いています。この視点は、現代の働く人々に「効率的な解決策」と「理想と現実の狭間での選択」を考えさせるヒントにもなります。

◆ ビジネスマンにも役立つ内蔵助のリーダーとしての言葉。これらの言葉からは現代の仕事でも役立つヒントが得られます。
「藩士たちを守るのが私の責務だ」・・組織のトップは部下を犠牲にしない判断をするべき。
「目先の感情ではなく、長期的な視点で判断せよ」・・短期的な成功ではなく、継続的な成長を目指す。
「声の大きい者が正しいわけではない」・・真実を見極める冷静さが重要。
「自分一人では道は切り開けない」・・チームワークの力を信じ、他者を尊重する姿勢。

◆ユーモアあふれる関西弁で語る内蔵助が描かれ、親近感が感じられる
内蔵助の悩みは深刻ですが、作品は重苦しいだけではありません。家臣たちの意気込みに振り回されながらも、「やってられへんわ!」と内蔵助が嘆くシーンには、思わず笑ってしまいます。このユーモアは、リーダーの孤独を和らげ、共感を誘う重要な要素となっています。
また、歴史に名を刻む英雄を、人間的な悩みを抱える「普通の人」として描いた点が、本作の最大の魅力です。忠臣蔵というと思いイメージがありますが、内蔵助の人柄が新鮮で身近に感じられるでしょう。

●著者プロフィール

1978年埼玉県生まれの一男一女の父。メーカー勤務のかたわら、2015年頃から本格的に小説を書き始める。2019年、Nirone名義で執筆した小説「わたしのイクメンブログ」が漫画化(全3巻・完結)。2020年「松の廊下でつかまえて」で第3回歴史文芸賞最優秀賞を受賞(「あの日、松の廊下で」に改題し文庫化)。引用:文庫カバーより

●まとめ

『討ち入りたくない内蔵助』は、忠臣蔵の物語を新しい角度で楽しめるだけでなく、リーダーが抱える苦悩や迷いを考える機会を与えてくれる一冊です。現代の仕事や生活における葛藤を内蔵助の物語に重ね合わせることで、新たな気づきが得られるでしょう。
この等身大の内蔵助の葛藤と成長を味わって、自分自身の「討ち入りたくない理由」を考えてみることで、人生の指針を見つけられるかもしれません。